医療現場では、診療や看護そのものだけでなく、会議資料の作成、報告書の作成、情報共有、教育、各種調整業務など、多くの間接業務が発生しています。一方で、医療従事者不足や業務負荷の増大は全国的な課題となっており、持続可能な医療提供体制の実現に向けた働き方改革が求められています。
こうした背景のもと、社会医療法人愛仁会(以下、愛仁会)は、質の高い医療サービスを安定的に提供するため、医療従事者および事務職員の業務負担軽減と業務効率化に継続的に取り組んでいます。特に近年は、間接業務を見直し、職員が患者さんにより多くの時間を充てられる環境づくりを重要な課題と位置付け、生成AIの活用を進めています。これまで愛仁会では、Microsoft Copilotの段階的な活用、職員向けの説明会・相談会、生成AI利用に関するルール整備などを進めてきました。こうした取り組みをさらに発展させるために、マイクロソフトが提供するAIプラットフォームやクラウド基盤、実装に関する知見を活用しながら取り組みを進め、生成AIを単なるツール導入にとどめず、業務プロセスの見直しや人材育成、ガバナンス整備と一体で推進していきます。さらに、得られた知見を整理し、全国の医療機関にも参考となるリファレンスモデルの構築を目指します。以下にその取り組みのポイントをご紹介します。
「AIを導入する」から「業務を変革する」へ
愛仁会では従来から情報共有基盤の整備を進めてきました(Teams と電子カルテの連携によりコミュニケーションを活性化し、チーム医療を促進。社会医療法人愛仁会と明石医療センターが進める業務改革 – マイクロソフト業界別の記事)。近年は生成AIへの期待が高まる中、「どの業務にAIを適用するか」だけでなく、「業務そのものをどのように変えるか」という視点で取り組みを進めています。特に注目しているのは、診療や看護を支える間接業務です。多くの職員が日常的に行う業務に生成AIを活用することで、資料作成、情報検索、情報整理、議事録作成などの効率化を図り、創出された時間を患者さんに向き合う時間、医療サービスの質の向上につながる活動へ再投資することを目指しています。
医療機関だからこそ重要なAIガバナンス
医療機関における生成AI活用では、利便性だけでなく、安全性、信頼性の確保が不可欠です。愛仁会では、データおよび生成結果の取り扱い、プライバシー保護、コンプライアンス、人による確認を前提とした利用ルールの整備や運用ガバナンスの構築を目指します。実践を通じて得られた知見は、AIガバナンスフレームワークとして整理し、今後の継続的な医療DX推進につなげていきます。
人材育成が変革の鍵
愛仁会では、職員一人ひとりのデジタルリテラシー向上を重視し、DXアンバサダーを中心とした教育プログラムや活用ガイドラインの整備を進めています。今後は、職種別・業務別のユースケースを検証し、現場で得られた知見を共有しながら、組織全体で生成AIを使いこなす力を高めていきます。こうした活動を通じて、業務変革力を高め、継続的な改善サイクルの定着を図ります。
全国の医療機関へ展開可能なモデルケースを目指して
日本の医療が直面する課題は、人口減少、高齢化、人材不足など共通するものが少なくありません。愛仁会と日本マイクロソフトは、本取り組みを通じて蓄積した知見を広く共有し、医療機関における生成AI活用のモデルケースとなることを目指します。
生成AIを活用した働き方改革は、単なる業務効率化ではありません。医療従事者が本来注力すべき医療やケアに集中できる環境を整え、持続可能な医療提供体制の実現に貢献していくための挑戦です。愛仁会と日本マイクロソフトは、これからも現場起点の変革を通じて、医療DXの新たな可能性を追求していきます。