2026年6月25日、日本マイクロソフトは品川本社にて、流通(小売・卸・消費財)業界のお客様をお招きし、「NRF APAC’26 / Microsoft Build リキャップ」セミナーを開催しました。
2026年6月第1週に、流通・小売業界最大級のグローバルイベント「NRF APAC’26」(シンガポール)と、マイクロソフトの開発者向けフラッグシップイベント「Microsoft Build」(サンフランシスコ)が相次いで開催され、本セミナーは、この2つのイベントで見えてきた最新動向を日本の流通業の文脈で読み解き、明日からの一歩につなげていただくことを狙いとした半日のプログラムです。本稿では、当日の各セッションのハイライトをレポートします。

オープニング 日本とAPACが世界の流通業イノベーションをリードする時代へ
Microsoft Corporation|APAC リテールインダストリーリード Irving Lee
開会のあいさつに立った Irving Lee は、NRF APAC’26から読み解く3つの潮流を示しました。
第一に、APAC はもはや先進地域を「追随する側」ではなく、イノベーションの「フロントランナー」であること。人口増加、都市化、そしてデジタルに精通した生活者という特性により、変化は世界のどこよりも速く起きており、2026年以降は APAC がトレンドを定義していく。
第二に、AI が違いを生む時代は「今」であること。AI は人を置き換えるのではなく、人間の野心と創造性を一段引き上げるものであり、テクノロジーを主語にせず、人と人との関係が主役になるときにこそ、最良の活用シナリオと成果が生まれる。
第三に、それを支えるのはデータとガバナンス、そして信頼であること。
そのうえで日本のお客様に向けて、「おもてなしの文化と、熟練したフロントラインの知見は日本の強み。その知見をAIレディなデータに変えることで、AI時代の自社ならではの『インテリジェンス』を築ける。問うべきはテクノロジーそのものではなく、自社にどう活かすかだ」とメッセージを送りました。

基調講演 エージェンティックAI時代の生活者の変化
~AIによる再編が始まったプラットフォーム経済~
アタラ株式会社|ファウンダー 杉原 剛 氏
最初のセッションに登壇した、杉原 剛氏は、AIの進化と普及によって生活者の情報探索、購買、広告、そしてプラットフォーム経済そのものがどのように変わり始めているかについて、NRF APAC’26での現地体験と最新事例を交えて語りました。
まず共有されたのは、生活者の行動は、従来の「Search → Browse → Buy」から、「Ask → Decide → Buy」へ移りつつある、ということです。これまでのECでは、生活者が検索し、複数の商品ページを閲覧し、比較したうえで購入していました。しかしAgentic AIの時代には、AIエージェントが生活者の意図を理解し、商品を探し、比較し、場合によっては購入や決済まで代行します。杉原氏は、NRF APAC’26の会場で「Agentic Commerceは、もう来ている」という空気を強く感じたと紹介し、これは米国だけの話ではなく、すでにアジアの標準語になりつつあると指摘しました。
この変化の背景にあるのが、検索そのもののAI化です。Google検索ではAI OverviewsやAI Modeのような体験が広がり、ユーザーは短いキーワードではなく、長く複雑な自然文で質問し、AIとの対話を通じて意思決定を進めるようになっています。検索エンジンが「リンク送客」から「AI内完結・再検索」へ変わることで、外部サイトにトラフィックが流れにくくなる、いわゆるゼロクリックサーチの増加も示されました。これは小売業にとって、来店やサイト訪問を待つだけではなく、AIに正しく商品を理解してもらうためのデータ設計が重要になることを意味します。具体的なトピックとして紹介されたのが、Googleが Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartらと共同開発し、決済・小売の主要プレイヤー20社以上が賛同する標準規格 UCP(Universal Commerce Protocol)です。これは、AIエージェントがユーザーの意図を理解し、商品の発見から比較、チェックアウト、注文管理までを一貫して完結させるための共通仕様で、Microsoftも Merchant Center での UCPフィード対応を開始しています。GapがGemini内での商品閲覧、スタイリング提案、購入完了まで可能なチェックアウト連携を開始したことや、Microsoft Copilot Checkout が Target で実装され、Copilot上で商品を探し、比較し、そのまま購入へ進める体験も紹介されました。Target のケースではロイヤルティプログラム「Target Circle」の特典が Copilot 内のチェックアウトに反映される点も、AI 上で顧客との関係性をどう維持するかを示す事例です。
さらに、AIエージェントに選ばれるためには、単に商品DBを持っているだけでは不十分であり、商品名、画像、価格、GTINといった基本情報に加え、レビュー、評価、在庫、販売者情報、配送条件、返品ポリシー、さらにはAIが対話の中で参照しやすい説明的な属性情報まで含めた、商品データのエンリッチメントが不可欠だと説明し、既存商品データベースをエンリッチし、Google Merchant Center、Microsoft Merchant Center をはじめ、ChatGPT や Amazon など各AI・EC プラットフォームの商品フィードへ供給するアーキテクチャも示されました。
さらに、広告領域にも同様の変化が起きていることが語られました。エージェンティック広告では、人間がメディアプランニングやキャンペーン運用をすべて手作業で行うのではなく、買う側と売る側のAIエージェント同士が、広告プランニング、条件交渉、キャンペーン作成、最適化、レポーティングまでを担う世界が想定されています。そのため広告主には、構造化されたデータフィード、ブランドコンテキストの明文化、ファーストパーティデータを含む各種シグナルの整備が求められます。
これからの競争は、検索結果画面で目立つことだけではなく、AIエージェントに正しく理解され、比較され、推薦され、取引可能な状態になっているかの重要性が増していきます。流通業者は、サイトやアプリの体験改善に加え、商品データ、在庫、価格、レビュー、広告、認証、決済を、AIが読み取り、判断し、接続できる形に再設計していく必要があります。まさに「AIに選ばれるための流通業独自の基盤」をどう構築するかが、Agentic AI時代の新たな競争軸になることと示し、セッションを締めくくりました。

NRF APAC’26 リキャップ
Microsoft Corporation日本担当インダストリーアドバイザー Eric Chen / Tony Xu
続いてのセッションでは、Microsoft のEric ChenとTony Xuが登壇し、NRF APAC’26の現地で得たインサイトと注目ソリューションを紹介しました。両氏が共通して強調したのは、AIエージェントの普及そのものではなく、「AIを前提とした小売業の競争軸」が大きく変化しているという点です。
NRFセッションサマリーを中心に、前半を担当したEric Chenは、現地セッション分析から見えたAPAC特有のトレンドとして、「人間中心(Human-Centered)」という考え方を紹介しました。特に印象的な事例として挙げられたのが、マレーシアのAEONによる「AEON360」です。従来の小売業は、自社だけで顧客を理解しようとしてきました。しかしAEON360では、店舗、アプリ、EC、決済、パートナー企業など複数の企業がデータを連携し、一人の顧客を360度で理解するエコシステムを構築しています。たとえば雨の日の朝に「今日は近くの店舗に傘と長靴があります」と通知したり、売れ残り商品の在庫削減を地域の顧客と結び付けたりするなど、単なる販促ではなく生活者への気遣いとして価値を提供する構想が紹介されました。
またフィリピン最大級のショッピングモール運営企業SM Supermallsの事例では、「AIを奴隷にしろ、奴隷になるな」というメッセージが紹介されました。AIはデータ収集や業務効率化に活用し、人間は顧客体験やコミュニティづくりといった創造的な領域に集中すべきであるという考え方です。パンデミック時にも従業員やテナントを守る意思決定を重視した事例が紹介され、AI時代だからこそ人間の判断や価値観が重要になると語られました。
さらにEric Chenは、世界各地のリテールイベントを分析した結果として、「売り方」「働き方」「作り方」「回し方」のすべてがAIによって同時に変化していると指摘しました。顧客は検索ではなくAIへの相談を通じて商品を選び、従業員はAIを同僚として活用し、新商品開発や店舗運営のスピードも飛躍的に向上しています。その一方で、AI活用の成功を左右するのは技術ではなくデータと組織であり、データ整備とチェンジマネジメントが重要であると強調しました。

NRF展示会場レポートを中心に、後半を担当したTony Xuは、展示会場で注目を集めていた最新ソリューションを題材に、「Store SignalsからEnterprise Intelligenceへ」という新たな潮流を解説しました。まず紹介されたHanshowは、スマートカートや電子棚札、センサーなどを活用してリアル店舗内の顧客行動をデジタル化するプラットフォームです。顧客がどの商品に興味を持ち、どの棚の前で立ち止まり、何をカートに入れたかという“Store Signals”を取得し、店舗をデータ生成装置として再定義する考え方が示されました。 続いて紹介されたSymphonyAIでは、売上低下などの事象について「何が起きたか」だけでなく、「なぜ起きたのか」「誰に影響したのか」「次に何をすべきか」までAIが推論し、改善施策と効果を提示する仕組みが紹介されました。
さらにRELEXでは、需要予測だけではなく、価格、販促、在庫、物流など多くの変数を同時に最適化し、利益最大化を目指すサプライチェーン意思決定が紹介されました。
そしてTony Xuは、こうした個別ソリューションだけでは十分ではないと指摘します。店舗、顧客、商品、価格、在庫、サプライチェーンなどの情報を横断的に結び付け、企業全体の文脈を理解したうえで意思決定を支援する「Enterprise Intelligence Layer」こそが次の競争力になるという考えです。Microsoft Fabric、Knowledge Graph、Azure AI Foundryなどを活用し、散在するデータと業務プロセスを接続することで、AIエージェントが真に企業全体を理解し、最適なアクションを導けるようになると締めくくりました。
本セッションは、AI活用事例の紹介にとどまらず、「人間中心の顧客体験」と「企業全体をつなぐインテリジェンス基盤」という二つの視点から、小売業の次の進化の方向性を示す内容となりました。AIエージェントの数を増やすことが目的ではなく、Enterprise全体の文脈を理解し、人間の価値を高めるためにAIをどう活用するかが、これからの小売業に問われる重要なテーマであることを示唆するセッションでした

Microsoft 最新テクノロジ ― Buildリキャップ
日本マイクロソフト 佐藤 壮一 / 田中 信也 / 左海 拓矢
本セミナー後半では、Microsoft Build 2026で発表された最新技術動向と、それを企業がどのように活用すべきかについて解説しました。単なる製品アップデートではなく、NRF APACで語られた小売業界の変化とBuildで示されたテクノロジーの進化をつなぎ合わせながら、「Agent時代に企業が取るべき戦略」が語られたセッションとなりました。
最初に登壇した佐藤 壮一は、Microsoft Build 2026のキーメッセージを紹介しました。BuildではAIエージェント、自律型開発、セキュリティ、クラウド基盤など数多くの発表が行われましたが、特に注目したのが「エージェントによる開発の爆発的な生産性向上」です。講演では、開発者コミュニティで話題となっている“トークン死”という現象を紹介し、AI活用が進むことで計算資源やトークン消費が急増している現状を解説しました。さらに、GitHub Copilotなどの最新ツールを活用すると、自然文と画像を渡すだけでアプリケーションが自律的に設計・実装・デプロイされる世界が実現し始めていることを実演し、「Copilotは副操縦士からAutopilotへ進化している」と語りました。Build全体を通じて示されたのは、ChatからCowork、Codeを経てAutopilotへ進化するAIの方向性でした。

続いて登壇した田中 信也は、「未来ではなく現実」をテーマに、Microsoft 365 Copilotと新たなエージェント技術の実践活用例を紹介しました。特に注目を集めたのが、Microsoft Scoutのデモです。Buildの英語セッション動画に対し、「日本語版を作って」という指示を与えるだけで、ScoutがWebアクセス、利用規約確認、動画解析、音声抽出、文字起こし、翻訳、セッション分割、さらには話者ごとの音声切り替えまでを自律的に実施する様子が紹介されました。これは単なる翻訳ツールではなく、人間の代わりに一連の業務を完遂する“オートパイロット型エージェント”の世界観を示すものでした。 さらに田中は、日常業務におけるCopilot活用例も紹介しました。毎朝8時に「返信が必要なメールやチャット」を自動抽出するスケジュール実行機能や、Research機能で収集した情報をもとにPowerPointを自動生成する使い方、さらにはExcelデータをノーコードでインタラクティブなHTMLダッシュボードへ変換する機能などを紹介し、「すでに現場で使える段階に入っている」と説明しました。AIを使うために専門的なトレーニングを受ける時代ではなく、自然言語で指示するだけで業務を遂行できる段階に達していることが強調されました。

最後に登壇した左海 拓矢は、NRF APACとBuildの内容を俯瞰しながら、企業がAgent時代に向けてどのような戦略を取るべきかを整理しました。左海はまず、NRF APACとBuildには共通するメッセージがあったと指摘します。それは「すべてをAI化することが目的ではない」ということです。NRF APACでは、高級リテーラーが「顧客接点は人間が担うべき」と語り、Buildでは「Agentが消費するトークンに見合う価値があるのか」が議論されました。つまり重要なのは、どこにAgentを組み込めば事業成長につながるかを自社で設計し運用できること、すなわち“手の内化”が競争力になるという考え方です。そのうえで左海は、Microsoftが提供する価値を3つの観点から説明しました。第一に、Copilot、Copilot Studio、Foundryなどを通じて全社員がAgentを開発・活用できる環境を提供できること。第二に、Work IQ、Fabric IQ、Foundry IQによって、人やデータ、ナレッジの文脈を理解するAI基盤を実現できること。第三に、Agent 365によってAgentの監視、ガバナンス、セキュリティを一体で管理できることです。また、先行事例の分析から、Agentと相性の良い業務として「プロセスが毎回変化する業務」「複数システムや複数人にまたがる業務」「リードタイムが長い業務」の3領域を提示しました。小売業においては、需要予測や在庫管理のラストワンマイル支援、店長から本部への報告業務、デジタルマーケティング運用などが有望な適用領域であり、まずはデジタル化済みで投資単価の高い領域からAgent活用を始めるべきだと提言しました。
本セッション全体を通じて伝えられたのは、「Agentは未来の話ではなく、すでに事業戦略上の検討対象になっている」ということでした。重要なのはAgentを導入すること自体ではなく、自社の競争優位や顧客体験を踏まえながら、どこに組み込み、どのように運用し、“手の内化”していくかです。NRF APACとBuildの両イベントが示したのは、まさにその意思決定が企業に求められる時代が始まったという現実でした。

パネルディスカッション 日本の流通業の変革方向性を考える

モデレーター:Microsoft Corporation インダストリーアドバイザー 岡田義史
最後のセッションでは、「流通小売・消費財業界の超変革時代 〜日本企業の勝ち筋は?〜」をテーマに、パネルディスカッションが行われました。モデレーターは マイクロソフト岡田 義史。パネリストとして、メディア・プラットフォーム視点から 杉原 剛氏、リテール・オムニチャネル視点から 逸見 光次郎氏、そしてマイクロソフト藤井 創一 が登壇しました。
冒頭、NRF APACに参加して見えた変化について議論が交わされました。逸見氏は、過去のNRF APACではインドネシアや韓国ロッテのように、経営者がAIやデータ活用を経営戦略として語る具体事例が印象的だった一方、今回はやや抽象度の高い議論が多かったと振り返りました。ただし、それは企業がAIを使っていないからではなく、むしろ試行が進み、何ができて何が難しいのかが見え始めたからこその変化だと指摘しました。藤井も、シンガポールの小売業界団体がAIを前面に出した展示を行っていたことに触れ、政府主導のデジタル化やID連携の土壌が、小売でのAI活用を現実的なものにしていると考察しました。
次に論点となったのは、AIによって消費者の購買行動が「検索して、比較して、買う」から「AIに聞き、判断を支援され、購入する」形へ変わりつつあることです。杉原氏は、AIエージェントが商品を2、3点だけ推薦する世界では、そこに入らなければ選択肢から外れてしまう怖さがあると指摘しました。そのため、企業は商品データやブランド情報を整備し、AIに正しく理解される状態を作る必要があります。一方で、APACは一つの市場ではなく、中国、インド、シンガポール、香港、オーストラリアなどで物流コスト、配送スピード、消費行動が大きく異なるため、ローカル市場に合わせた設計が欠かせないという学びも共有されました。
日本ならではの強みとして浮かび上がったのが、店舗と接客の質です。逸見氏は、日本の店舗接客は海外と比べても非常に優れており、それは強みであると同時に、変革の足かせにもなり得ると述べました。しかし、その接客力や現場の判断をAIに取り込むことができれば、日本の小売にはまだ大きな伸びしろがあるとも語りました。藤井は、百貨店従業員の知見を例に、現場には顧客との関係性、困りごと、接客の工夫が蓄積されているにもかかわらず、それが企業のデータや経営判断に十分接続されていない課題を指摘しました。AI活用を現場に落とし込む難しさについては、単なる技術導入ではなく、業務フローそのものの可視化と見直しが必要だという点で議論が深まりました。逸見氏は、多くの企業では頭の中に業務フローはあるものの、部門をまたいで全体を描ける人が少ないと指摘しました。その状態でAIを入れても、どこを効率化すべきか、どの業務をやめるべきかが見えず、PoC止まりになりやすいというのです。杉原氏も、海外では実験予算を持ち、失敗を前提に新しいプラットフォームや施策へ挑戦する文化がある一方、日本では最初から本番適用レベルの稟議を通そうとして硬直化しがちだと述べました。
後半では、日本企業の勝ち筋として「現場知」の活用が大きなテーマになりました。逸見氏は、事業部長やベテラン人材は豊かな経験値を持っているものの、それを顧客軸やLTVのような形で定量化する習慣が弱いと指摘しました。ダッシュボードなどを通じて、自分たちの経験則がデータで裏付けられると、現場や事業側は自らデータを使い始める。その蓄積が、やがてAIの教師データになっていくという考え方です。また、カメラのキタムラでの中古カメラ査定やスタジオマリオの衣装分析の例をもとに、画像などの非構造データをAIで読み解くことで、ベテランの知見を全店展開や未来予測へつなげられる可能性も語られました。
最後に、各パネリストから経営やリーダーが今取り組むべきことが語られました。杉原氏は、エージェンティックコマースの流行に焦りすぎず、まず足元のデータ基盤、API接続性、AIに発見されるための情報設計を整えること、そしてAIに任せる領域と人間が担う領域を経営として線引きすることが重要だと述べました。逸見氏は、現場を本当に動かすには「何をやるか」だけでなく「何を減らすか、何をやめるか」を経営が決める必要があると強調しました。藤井は、AI時代の変革は長いロードマップであり、マイクロソフトは企業と人の『エンパワーメント』に徹底的にフォーカスし、伴走するパートナーでありたいと締めくくりました。
このパネルディスカッションは、海外事例を日本にそのまま持ち込むのではなく、日本の小売業が持つ店舗力、接客力、現場知をいかにAIで拡張するかを問う場となりました。AIは現場の人を置き換えるものではなく、人が持つ知見を可視化し、組織に循環させ、より良い顧客体験へつなげるための手段です。日本企業の勝ち筋は、テクノロジーの導入そのものではなく、現場を巻き込みながら、データ、業務、経営判断をつなぐ学びのループを作れるかにあることを強く印象づけるセッションでした。

クロージング ― インテリジェンスを活用した「AI時代の流通業」に伴走
日本マイクロソフト 執行役員 常務 浅野 智
最後に登壇した日本マイクロソフト執行役員常務の浅野は、「AI時代の競争力は、現場で生まれる知恵や工夫をいかにデータとして循環させるかにある」と語りました。Buildで発表された構想「Project Solara」を例に、カメラやマイクを備えたAIデバイスによって、これまで可視化できなかった現場の暗黙知や“おもてなし”を企業の資産へ変えていく未来を紹介。NRF APACとBuildを通じて見えてきたのは、AIが人を置き換える世界ではなく、人の価値を最大化する世界であり、マイクロソフトは、こうした新しいテクノロジーを単なる紹介に留めず、お客様と共に構想し、試し、実装し、成果につなげる伴走者でありたいと表明。参加者に向けて「これから始まるAgentic AI時代を共に切り拓いていきましょう」と呼びかけ、会場は大きな期待感とともにセミナーの幕を閉じました。

おわりに
半日のプログラムの後には、登壇者と参加者が相互交流するネットワーキングと、最新ソリューションを体感できる Innovation Hub Tour も実施されました。
参加者は当セミナーでの学びを相互に共有し理解を深めるとともに、企業の枠を超えた得難い連携創出の機会を存分に楽しまれました。
マイクロソフトは、流通(小売・卸・消費財)業界のお客様の変革に伴走するパートナーとして、AI時代の変革をご支援する取り組みを続けてまいります。

※本レポートは当日のセッション内容をもとに構成しています。掲載の写真は各セッションのものです。