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「ゲームを民主化する」業界のゲーム チェンジャー Azure PlayFab の目指す未来とは

Microsoft PlayFab Head of Developer Success
ブレンダン ヴァノス 氏

Microsoft PlayFab Partner Engagement Manager
ネイサン シム 氏

Microsoft Game Stack Ambassador
ねこじょーかー 氏

デジタル ゲームの開発は、以前と比べてとても身近なものになっています。「Unity」や「Unreal Engine」などのゲーム エンジンを駆使して大手デベロッパー顔負けの高品質なゲームをつくる個人開発者も少なくありません。

一方で現代のゲーム開発は、パッケージ版での販売を目指すのではなく、オンラインで運用しながらユーザーのニーズに合わせて変化を続ける「LiveOps」の手法が主流となっています。ですが、個人開発者や小規模スタジオにとっては、ユーザーのニーズを把握しながらゲームを継続的に進化させるためにゼロから専用チームやツールを設けるのは大きな負担となります。

そこで注目されているのが「Azure PlayFab」です。Microsoft は、2018 年にマルチ プラットフォームのオンライン バックエンド サービスを提供する PlayFab 社を買収しました。PlayFab の技術と知見が詰め込まれた Azure PlayFab は、ユーザー情報の蓄積や分析、バックエンド サービスやマルチプレイヤー機能の管理、サーバのメンテナンス機能などによって、開発者の負担を減らしてゲームの進化に貢献する LiveOps ツールであり、規模の大小にかかわらず、世界中のゲーム開発者をサポートしています。

本稿の前半では PlayFab の開発をリードし、現在は Azure PlayFab のエンゲージメント マネージャーを務めるネイサン シム氏と、デベロッパー サクセスの責任者であるブレンダン ヴァノス氏に、Azure PlayFab の特徴や可能性について話をお聞きしました。後半では、Azure PlayFab の解説本を出版するなど日本の Azure PlayFab コミュニティの中心人物である、ねこじょーかー氏を交えた鼎談を掲載しています。3 人のメッセージは、Azure PlayFab の導入を考えているデベロッパーや個人開発者にとって、大いに参考になるはずです。

ねこじょーかー氏
・著書はこちら
・ブログ「PlayFabマスターへの道

■開発者の負担を減らし、ゲームの進化に貢献する LiveOps ツール「Azure PlayFab」

-Azure PlayFab の特徴についてお聞かせください。

ブレンダン: Azure PlayFab のユニークなところは、ゲームや他のアプリケーションのバックエンド サービスを提供している点なのですが、私たちは運用を支援するサービスにも注力しています。現代のゲーム開発においては運用のフェーズが重要視されます。そしてもし問題が発生したときには、規模が大きいほど影響も大きくなってしまうからです。

1 つの事例があります。あるとき、人気キャラクターをモチーフにしたゲームがリリースされることになりました。ところが、ローンチの段階でクエリのパフォーマンスがまったく出ないことが判明し、3 か月に渡って運用を中断して、バックエンドをゼロからつくり直す事態に陥ってしまいました。話題になっていた分、デベロッパーは莫大なコストを払う結果になってしまったのです。

Azure PlayFab では、そのようなリスクを回避するために、クエリを Azure PlayFab が受け持つ方式を採用しています。プレイヤーの数に関わらずクエリをかけられる仕様なので、デベロッパー側が 24 時間 365 日モニタリングしなければならないような状況は不要となります。

-Azure PlayFab の最近の利用事例についてお聞かせください。

ネイサン: Xbox をプラットフォームとしているシューティング ゲーム「Doom Eternal (英語)」は、現在 Azure PlayFab の MPS (Multi Player Server) が持つほぼすべての機能を使って開発されています。特にユニークな点は、リアルタイムのプレイヤー数に応じて自動的に規模の大きさを変えられる「オートスケール機能」です。平日は少ないプレイヤーの人数が休日になって急激に増えたとしても、柔軟に対応できるというわけです。

もう 1 点、この「Doom Eternal」は Azure のデータ センターを利用しており、世界各地のサーバが自動的にデータを管理しているため、どの地域のプレイヤーも、遅延を感じることがありません。これはシューティング ゲーム愛好者にとっては大きなメリットになるはずです。

参考: Scaling global game servers with PlayFab Multiplayer Servers (英語)

-Azure PlayFab を使うことで開発者にはどんなメリットがあるでしょうか?

ブレンダン: Azure PlayFab はオンライン ゲーム用のバックエンド サービスなのですが、ゲームに利用するだけでなく、データ システムやリアルタイムのゲーム オペレーションやマルチプレイなどとシンプルに統合できるのが大きな特徴です。

以前、ヨーロッパにあるデベロッパーから依頼を受けて、Azure PlayFab のベースコンポーネントを、彼らがゲームを開発しているエンジンに統合する作業を行うために彼らの会社まで訪問したことがあったんです。その際、先方は作業期間として 2 日間を見込んでいたのですが、認証機能やプレイヤーのデータ、リーダーボードなどを統合するのに要したのは、たったの 1 時間ということもありました。

■成長市場である日本で、さらに認知を広げたい

-日本においては、Azure PlayFab はどのように評価されているのでしょうか?

ネイサン: 2022 年 3 月 17 日現在で、日本での Azure PlayFab ユーザーの数は、他のアジア地域を比べても一番多いです。ユーザーの中には、独立系のデベロッパーや中堅規模のスタジオだけでなく、カプコンなどの大手デベロッパーも含まれています。

ブレンダン: アカウントの数だけで言えば欧米の方が多いのですが、向こうは独立系のスタジオが多く、日本では大手デベロッパーにも採用されている点が大きな特徴だと思います。

ネイサン: もう 1 つ、日本のユニークな特徴があります。それは Azure PlayFab に関する書籍が多く出版されている点です。他の地域では YouTube などで情報を共有するケースが多いのですが、書籍の出版数は多くありません。この傾向は、日本における Azure PlayFab の成長率の高さを示していると思っています。

ブレンダン: 一方で、コロナ禍が日本における Azure PlayFab の普及を難しくしているのも事実です。私たちもパンデミックが起こる前はひんぱんに日本でカンファレンスを開催していたのですが、この 2 年間そうした活動ができていません。

私たちは媒体を通じた Azure PlayFab の広告は行っていないので、デベロッパーのコミュニティにアピールしたくてもできない今の状況は大きな課題です。たとえば、カプコン社が Azure PlayFab を利用している事例を多くの人に知ってもらえば、もっと多くの開発者に Azure PlayFab のよさが伝わると思うんです。個人的にも日本のデベロッパー コミュニティが好きなので、パンデミックが収まったらぜひ日本に帰って皆さんとお話ししたいと思っています。

■Microsoft とのコラボレーションで広がる Azure PlayFab の可能性

-Microsoft とのコラボレーションによってどのような変化がありましたか?

ブレンダン: Microsoft では、多くのチームがさまざまなソリューションや製品に携わっています。そういった意味で、私たちが扱えるリソースが格段に増えたという点が 1 つ。それから、私たちは Microsoft のリサーチ チームとも協業しており、機械学習のプロジェクトが開発したユーザーの解約予測機能を Azure PlayFab に実装しているのですが、その機能をさらにゲーム以外のアプリケーションに対応させていくといったコラボレーションも実現できています。

もう 1 つ例を挙げると、オンラインゲームでは、ゲーム中のチャット会話による嫌がらせやいじめといった問題があるのですが、2021 年に Microsoft に仲間入りした Two Hat という会社は、オンラインの会話のなかから悪い言葉や汚い言葉を抽出する技術を持っています。この技術を Azure PlayFab に実装すれば、問題解決につながるのではないかと期待しています。

ネイサン: Microsoft のメンバーになったことで、すでに統合済みのテクノロジを活用できるのも大きなメリットです。例えば Azure に実装されている機械学習駆動の機能によって、マッチ メイキング機能が使えるようになりました。Azure のアナリティクス機能も Azure PlayFab に取り込んでいます。

-今後、Azure PlayFab はどのように進化していくのでしょうか?

ネイサン: さらにさまざまな機能が実装される予定です。前の話にも出てきた解約予測機能、AB テストを拡張して、シナリオを 6 個までテストできる機能、ゲームの異なるバージョンを並行して開発できる Azure DevTest Labs と呼ばれる機能など、開発者にとってより有用な機能を提供していきます。

ブレンダン: まだあまり知られていないかもしれませんが、プレイヤー自身が独自のコンテンツを作成し、他のプレイヤーがそれを体験できる機能が実装されています。「Minecraft」などで使える機能で、コミュニティのなかでクリエイターが生み出され、そのクリエイティブを他の人が楽しむエコシステムができることで、ゲームをより長く楽しめるようになるはずです。

ネイサン: 今後の取り組みとしては、Azure PlayFab を Azure のサービスの 1 つにしていきたいと考えています。Azure のなかの 1 つのサービスに位置づけられることで、Azure の標準サポート契約で使えるようなりますし、課金の方法もシンプルになります。今はこのサービスはエンタープライズ ユーザーだけに展開しているのですが、これをすべてのユーザーに適応していきたいと思っています。Azure とさらに緊密に連携し、Azure が既に持っているツールやリージョナル データセンターを活用することで、Azure PlayFab を全世界に普及できるようになると期待しています。

ブレンダン: 私は、統合前の PlayFab 社に入社する以前、Microsoft で Xbox の部門にいました。なぜ Microsoft を辞めたかというと、「ゲームを民主化したい」という思いがあったからなんです。大規模デベロッパーだけのものだったゲーム開発能力を、もっと一般に解放していきたい、もっと言うと、ゲームの民主化は大規模デベロッパーにとっても開発コストの削減につながるはず、そう思ったんです。その計画は PlayFab の開発、そして Microsoft との協業により大きく前進しました。

Unity や Unreal Engine などのゲーム エンジンを使って、個人や小規模スタジオでも気軽にゲームが開発できるようになりました。Azure PlayFab を通して彼らに汎用的なサービス レイヤーを提供し続け、今後もより一層ゲームの民主化に貢献していきたいと思っています。

-ありがとうございました!

Azure PlayFab 担当者と日本のユーザー代表による三者鼎談を開催!

■「勉強会に参加して、これはすごいサービスだと感じました」

ねこじょーかー: はじめまして。私は日本の Azure PlayFab コミュニティのメンバーのひとりで、コミュニティのオーガーナイザーである西根幸洋氏と共著で「PlayFabゲーム開発テクニック」という本も書かせていただいている「ねこじょーかー」といいます。Microsoft の Game Stack Ambassador も務めさせていただいています。

ブレンダン: 西根さんとお知り合いでしたか。西根さんは、以前 Azure PlayFab のイベントで登壇してくれた方ですよね。

ネイサン: どうして「ねこじょーかー」という名前なのですか? 猫が好きだから?

ねこじょーかー: はい。猫が好きなのと、「ねこ」だけだと特定できないので、後ろに自分がかっこいいと思う「じょーかー」という言葉をつけました。

ネイサン: かっこいいです (笑)。ねこじょーかーさんはどうして Azure PlayFab を使い始めたのですか?

ねこじょーかー: もともと私はゲームとは関係ない仕事をしていたのですが、他になにか自分ができることやスキルを増やしたいと思ったんですね。いろいろと調べていたところ Unity の存在を知りまして、情報を集めていくうちに Azure PlayFab に出会ったんです。その後 Azure PlayFab の勉強会に参加して、これはすごいサービスだと感じました。とても使いやすくて、いろいろなことが実現できそうだな、と。

ただ、Azure PlayFab を使っていくうちに、公式ドキュメントだけだと行き詰まってしまうことも増えていきました。コミュニティサイトなどで調べなければいけない場合も多くて、これは他の開発者も同じようなところでつまづくのではないかと思い、その助けになればと自分でブログや本を書き始めました。それが 2 年ほど前ですね。

■「私も必ず購入させていただきます。ただ…翻訳の予定はありますか (笑)?」

ネイサン: 公式ドキュメントが読みにくかった点は把握していますし、申し訳なく思っています。実は、以前は機械翻訳を使って翻訳してから人間が編集する方法をとってしまったので、文章として読みにくいものも含まれてしまっていたんです。今新しいバージョンを作成していて、世界の各地域ごとに、日本語、ドイツ語、中国語、韓国語の翻訳者がしっかりと翻訳するので、皆さんにも読みやすいドキュメントになるはずです。

ブレンダン: でも、そんな大変な状況で解説本まで書いていただいたんですね。読んだ方からの評判はいかがですか?

ねこじょーかー: Azure PlayFab を全く知らない人でも始められるように、というコンセプトで書いた本なので、「ログインまではドキュメントを読みながらできたけれど、その先のいろいろな機能を組み合わせる際にはとても参考になったのでよかった」という感想は嬉しかったです。

私のような個人のゲーム開発者は孤独に作業と向き合う場合が多いので、自分ひとりで考え込んで何日も無駄にしてしまうようなことも多いんです。私のブログや本を読んで、私がつまづいたのと同じようなところでつまづく人が減ってほしいですし、ゲーム業界の盛り上がりに少しでも貢献できればと思っています。

ブレンダン: 素晴らしい。私も必ず購入させていただきます。ただ…英語への翻訳の予定はありますか (笑)?

ねこじょーかー: ええ、できれば。より多くの人に読んでもらいたいですから。

ネイサン: それを聞けてよかったです (笑)。

■「日本のユーザーに情報が行き届かないのは、動画にフォーカスが移っていることが一因かも」

ネイサン: ところでねこじょーかーさんは、Azure PlayFab のどこに魅力を感じていますか?

ねこじょーかー: Azure PlayFab は実装が簡単なうえにテストも必要最低限で済むので、最小限のソースコードでやりたいことをすぐに実現できるのが好きなポイントですね。それから管理画面の操作性が素晴らしいと思っています。他の類似ツールも操作したことがあるのですが、どうしても操作画面が扱いにくくて。

ブレンダン: ありがとうございます。逆に「もっとこうしてほしい」といった提案があればチームにも伝えようと思いますが、いかがですか?

ねこじょーかー: そうですね。私は Unity と組み合わせて使っているので、同じ組み合わせで使う人には有益な情報をお伝えできていると思うのですが、Unreal Engine と組み合わせて使っている人のサポートがうまくできていないのが現状です。海外からも私のブログに問い合わせがあるくらい情報が少ないので、Unreal Engine と Azure PlayFab の組み合わせについて詳しいドキュメントがあると、よりありがたいと思います。

ネイサン: そのコメント、非常にありがたくお聞きしました。Unreal Engine との組み合わせに関しては GitHub にコードが載っているので、そちらを参照していただくのも 1 つの方法かもしれません。ところで日本の Azure PlayFab コミュニティの皆さんは、どんなふうに情報を共有しているのですか?

ねこじょーかー: もともとは定期的にコミュニティのイベントがあって、そこで情報を得られたのですが、コロナ禍になってから対面で会う機会がなくなってしまったので、ブログの問い合わせや Twitter などでやり取りしていますね。逆に海外のデベロッパーの人たちはどうやって疑問を解決しているのですか?

ブレンダン: 日本はどちらかというとドキュメントや資料を読み込むことを好むユーザーが多いですよね。海外では YouTube にアップされているチュートリアル動画を参照することが多いんです。もしかしたら、日本のユーザーに情報が行き届かないのは、動画にフォーカスが移っていることが一因かもしれません。

■「自由にクリエイティビティを発揮してください。私たちマイクロソフトが全力でサポートします。」

ネイサン: Azure PlayFab のコミュニティサイトを活用しているユーザーも多いのですが、日本のユーザーにとっては英語しか使えないところがデメリットになってしまいますよね。

ねこじょーかー: そうですね。読むだけならいいのですが、質問してコミュニケーションを取るとなると、ちょっと大変かもしれません。

ブレンダン: 日本のユーザーの特性は、私たちもよく把握しています。今後 Azure PlayFab を Azure の中の 1 つのサービスにしていきたいと考えているのですが、その理由の 1 つとして、よりよい日本語サポートが提供したいという思いがあります。今はアジアという括りになってしまっている部分を、今後は日本に特化したサービスに展開していきたいと思っています。

ねこじょーかー: そうなると嬉しいです。実は、ゲームに関して質問できるサービスを自分でつくったのですが、コミュニティのメンバーに投稿してもらう働きかけなどが行き届かなくて、個人で運営する限界を感じていたところなんです。公式でそのようなサービスが提供されると、メンバーも投稿しやすくなるかもしれません。

ブレンダン: なるほど。

ねこじょーかー: コロナ禍が過ぎたらオフラインで集まれる機会も復活させたいと思っています。そこも公式でサポートしてもらえるとありがたいです。

ネイサン: ぜひお手伝いさせてください。PlayFab チームから会場にいる皆さんにピザを奢りますよ (笑)。日本の開発者の皆さん、ねこじょーかーさんを信じてください。彼の知識は本当に素晴らしいです。

ブレンダン: ご存知の通り、Azure PlayFab は特定のプラットフォームに依存していません。そして今後もさまざまな機能を展開して高度化していきます。開発者の皆さんも、過去に縛られず、自分を制限せずに、Azure PlayFab を使って自由にクリエイティビティを発揮してください。私たちマイクロソフトが全力でサポートします。

ねこじょーかー: はい。今日はありがとうございました。

ブレンダン/ネイサン: 私たちも楽しかったです。1 日も早く直接お会いできる日が来ることを願っています。

ねこじょーかー氏
・著書はこちら
・ブログ「PlayFabマスターへの道

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