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パソナグループのシャトルバス運行管理アプリ「BaaS」実用化への道〜コーディング未経験からのアプリ開発ストーリー〜

株式会社パソナグループでは、グループ内の従業員を対象とする DX 推進人材育成プログラム「リスキリング・イニシアティブ」を開始しました。2021 年 1 月から 6 月にかけて実施された第 1 期では、グループ各社から選抜された 40 人が参加。DX 推進の基礎から実践的な技術の習得までさまざまなプログラムを体験しました。

本プログラムではサポートツールとしてMicrosoft Power Platformを採用。参加者はローコードでアプリを開発できるMicrosoft Power Appsを用いて、社内の課題を解決するためのアプリを考案・開発し、成果発表会のプレゼンで評価を競いました。

その成果発表会でグランプリを受賞してアプリの実用化権を獲得したのが、同社が拠点を置く淡路島でのシャトルバス運行を管理する「BaaSアプリ」です。本稿では、試行錯誤しながらも着々と進行している実用化プロセスの裏側について、開発チームの皆さんに話をお聞きしました。

関連記事: 「パソナグループがリスキリングによる DX 人材の育成を推進! ローコードのアプリ開発を Power Platform で実践」

パソナグループが運行するシャトルバス

インタビュー参加者

株式会社パソナグループ グループDX統括本部
デジタル戦略部ビジネスパートナーグループ
木下 信 氏

株式会社パソナグループ グループDX統括本部 デジタル戦略部ビジネスパートナーグループ 木下 信 氏

株式会社パソナグループ グループDX統括本部
デジタルプラットフォーム統括部アプリケーション1チーム
小田島 瑞希 氏

株式会社パソナグループ グループDX統括本部 デジタルプラットフォーム統括部アプリケーション1チーム 小田島 瑞希 氏

株式会社パソナグループ グループDX統括本部 デジタル戦略部
池田 慧 氏

株式会社パソナグループ グループDX統括本部 デジタル戦略部 池田 慧 氏

■日々の業務でデジタルの力を感じ、DX 推進人材育成プログラムに参加

第 1 期のリスキリング・イニシアティブに参加し、BaaS アプリを考案したチームに所属していた木下氏。もともとパソナグループでは営業職として勤務しており、IT のバックグラウンドは全くありませんでした。ですが、担当していた IT 系や SaaS 系企業の事業内容を見聞きするなかで「デジタルには世の中を変える力がある」と強く感じたことから、プログラムへの参加を決めたそうです。

リスキング・イニシアティブ

リスキリング・イニシアティブのプログラムでは、後半の 3 か月間は 4 人 1 組のチームに分かれて課題を設定し、アプリ開発をはじめとするデジタルの技術で解決方法を探る、DX の実践体験が行われます。

木下さんのチームでも地域活性化や EdTech といったさまざまなテーマが候補に挙がったそうですが、パソナグループが拠点を置く淡路島勤務のチームメンバーが発案した「淡路島内を走るシャトルバス利用における課題を解決するアプリ制作」が最も明確かつ身近なアイディアだったことから、BaaS アプリの開発に取り組むことにしたそうです。ちなみに「BaaS」という名称は「MaaS (Mobility as a Service)」と「Bus」を掛け合わせた造語で、まさに言い得て妙なネーミング。チーム内の誰からともなくそう呼ばれ始めたのだそうです。

■コーディング未経験の 4 人がアプリを開発してお披露目に至るまで

淡路島に就業する社員の多くが交通手段としてシャトルバスを利用しているそうですが、そこにはいくつかの課題がありました。

  1. 時刻表が PDF で管理され、路線や曜日ごとに 6 種類も存在するので使い勝手が悪い
  2. 遅延情報や忘れ物情報は SNS で共有されているが、やり取りに手間がかかり、見落としなど人的ミスにもつながりやすい
  3. 混雑時は渋滞で遅延することがあるため、乗りたいバスが今どこを走っているか分からない
  4. 時刻表が更新されるたびに新たな PDF を作成する必要が生じる

木下氏のチームは、ユーザー側および運営側の工数を減らし、淡路島に就業する社員にとって必要不可欠な交通インフラであるバスを快適に利用できるようにすることを目的として、BaaS アプリの開発に取り掛かりました。

Microsoft Power Apps は、用意されたテンプレートや直感的な UI により、ローコードでアプリを開発できるツールです。4 人全員がコーディング未経験だった木下氏のチームでしたが、Microsoft Power Apps を使ってプログラム期間内にプロトタイプの制作を終えることができました。

「正直、ここまでできるようになるとは思っていませんでした。実際に手を動かしてアプリをつくって、お披露目するところまで経験できたのはとても刺激になりましたね。参加者全員、濃密な半年間を過ごせたと思います」と振り返る木下氏ですが、「ローコードとはいえ、ある程度は自分でコードを記述する必要がありますし、エラーが出るたびにメンバーみんなで原因を調べては修正する試行錯誤を繰り返しました」と語るとおり、コーディング未経験者ならではの苦労も多かったそうです。

プログラム期間中から現在に至るまでプログラム参加者と密に連携してきた日本マイクロソフトの技術サポートについては、「Teams などで気軽に相談できたので、とても助かりました」と評価してくださいました。

従来の運用 (As is)
運用フロー (To be)

■実用化フェーズで心強いメンバーが参加

時刻表の検索機能を実装したプロトタイプの BaaS アプリが成果発表会でグランプリを獲得し、実用化のフェーズに入ったタイミングでプロジェクトに参加したのが小田島氏と池田氏でした。

小田島氏は 2021 年 9 月にパソナグループに入社。前職でアプリ開発に携わっていたことから、BaaS アプリ開発チームに参画。池田氏は小田島氏より 1 か月早い入社で、Microsoft Power Apps を用いたアプリ開発の経験者かつ淡路島勤務の当事者でもあります。現在、木下氏を含むこの 3 名が中心となって開発を進めているそうです。

「2 人が加わってからの開発スピードは圧巻でした」と木下氏が語るとおり、小田島氏と池田氏のスキルがアプリ開発を大きく前進させ、9 月から始動して 11 月末には第 1 フェーズのリリースを迎えることができました。第 1 フェーズでは、時刻表検索機能に加えて乗り換え検索機能、夜間の要請便予約機能などを実装。プロトタイプがあったとはいえ、かなりのスピード感です。

プロトタイプ制作時にはうまくつくり込めなかった乗り換え検索機能は、小田島氏が担当。「データ元の時刻表 PDF から、どのようにデータを加工して処理すればうまくアウトプットできるのかを考える部分に苦労しました」。アプリ開発の経験はあるものの Microsoft Power Apps は未経験。1 つ 1 つ勉強しながらの作業だったそうです。「これまでのツールにはなかった機能が充実していて、こんなに簡単につくれるのか、と驚きました」。

池田氏は、「すぐに画面で検証できる点が非常に使いやすいと感じました」と Microsoft Power Apps の印象を語ります。「簡単に使えるものなので、簡単なアプリしかつくれないのかな、と思っていたのですが、コーディングと組み合わせればかなり高度な機能が実装できることもわかりました。使い方次第で大きな可能性が広がるツールだと思います」。

2022 年 1 月現在、3 人は運用展開の第 2 フェーズの開発を進めています。車内への忘れ物情報共有機能には目処が立っているものの、目下の懸案はバスの位置情報表示機能とのこと。

「位置情報データの表示方法で試行錯誤しているところです。ビーコンを使って位置情報は取得できそうなのですが、それをアプリ上にどう表示するのかが今の悩みです」と池田氏。淡路島在勤の池田氏のもとには、多くのユーザーから位置情報表示機能のリクエストが寄せられているそうで、「次のフェーズには必ず間に合わせたい」と意気込みを語ってくれました。

運用展開 Phase

「ゆくゆくは、BaaS アプリを起点としたコミュニティ形成を目指していきたいと考えています」と構想を語る木下氏。「たとえばスーパーの近くにいる人に買い物を頼める買い物代行機能や観光情報とのリンクなど、淡路島のスマートシティ化にも寄与できればと思っています」。

木下氏はリスキリング・イニシアティブでの経験を経て部署を異動し、今はグループDX統括本部に所属しています。「自分から DX 推進人材の募集に応募したんです。この 1 年間の経験をグループ内の DX 推進に生かしていければと思っています」。1 年前にはコーディングの経験もなかった木下氏ですが、すでに社内でのスキルシェアを支援するアプリの制作にも取り組んでいるそうです。

■BaaS アプリ開発をきっかけとして社内 DX 推進への思いを新たに

BaaS アプリのプロジェクトを通して、DX 推進への思いをさらに強めたと語る 3 人。木下氏はスキルの習得だけでなく DX の本質に気づいたと言います。「大切なのは、あらゆるユーザーの視点に立つことです。この BaaS アプリでも、プロトタイプの制作時にはバス利用者側の視点に偏ってしまっていました。ですがこのアプリのユーザーはバス利用者だけではありません。実用化の段階で運行会社や運転手にヒアリングをしてみると、思いも寄らない視点から指摘を受けました。本当に使いやすいアプリを実現するには、双方の視点に立って開発を進める必要があると気がつきました」。

デジタルの力で誰もが便利に過ごせる社会を実現するのが DX の 1 つの目的であり、木下氏は「当社はたくさんのグループ企業がありますから、各方面のステークホルダーの方と密に関わりながらDXを進めて、課題を解決していきたいと思います」と DX 推進への熱い思いを語ってくれました。

小田島氏は、「今回の開発を通じて、これまでアプリやデジタルに触れてこなかったバスの運行会社の方々、なかでも上の世代の方々にデジタルの力を感じてもらえたと思っています。淡路島はもちろん、社内でもアナログな部分はまだありますので、小さいことからでもデジタル化につなげられるよう貢献していきたいです」と今後に向けた抱負を語ります。

そして池田氏も、「リスキリング・イニシアティブをはじめとする取り組みで、今後さらにグループ全体のITリテラシーの向上が進むと思います。私も開発者の 1 人として、社内から寄せられるさまざまな要望に応えていきたいと思います」と力強くコメントしてくれました。

■DX 推進のよきパートナーとして、よりよい循環を

「今後も Power Platform を活用して DX を進めていきたいと思っていますので、日本マイクロソフトさんには引き続き手厚いご支援をお願いできれば」と木下氏。「Microsoft Power Apps はよりノーコードに近づけていただきたいですし、新しい機能のリクエストもたくさんあります」と日本マイクロソフトへの期待を語ります。

日本マイクロソフトとしても、ユーザーの皆さまからの声は、製品開発における大きなメリットとなります。さまざまなツールを実際に利用していただき、フィードバックをいただくことで、すぐに機能の拡充につなげられるクラウドサービスの利点を生かせるからです。これからも、グループ全体で DX 推進に取り組むパソナグループさまのよきパートナーとして、よい循環を構築していけることを願っています。

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