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サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI とは

サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI とは、自律エージェントを使用して、人の介入を最小限に抑えて脅威の検出、調査、対応を行うことです。
Microsoft デジタル防衛レポート 2024: サイバーセキュリティの基盤と新たなフロンティア

サイバーセキュリティ エージェントとは、セキュリティ チームを自律的に支援するよう設計された AI 搭載の機能です。サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI とは、特に、サイバー脅威の検出、調査、対応にこうしたエージェントがどのように使用されるのかを指しています。

脅威アクターが自動化を使ってサイバー攻撃を迅速化するケースが増える中、セキュリティ チームはさまざまなシナリオでエージェントを展開して、より迅速に対応し、新たなリスクに先手を打つのに役立てています。

重要なポイント

  • サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI は、推論、計画、継続的な学習を使用して複数ステップのタスクを実行することで、自律的に目標を追求します。
  • セキュリティ チームはエージェント型 AI の採用を進めており、膨大な量のアラート、AI の支援による攻撃の迅速化、アナリストの疲労、複雑なハイブリッド環境など、増大するサイバーセキュリティの課題への対応に役立てています。
  • エージェント型 AI は、脅威の検出と対応の迅速化、反復的なアナリスト業務の軽減、優先順位付けの改善、より一貫性のあるスケーラブルなセキュリティ カバレッジの提供により、セキュリティ オペレーションを向上させることができます。
  • AI エージェントは、フィッシング、データ セキュリティ、ID 管理などの重要な領域に特化したワークフローを支援するよう設計されています。
  • 組織は、エージェント型 AI が安全かつ透明性を保ち、定義された境界内で確実に動作するように、ガードレール、承認ワークフロー、ロールベースのアクセス制御、監査を使用します。
  • 多くの組織は、チームのキャパシティがさらに必要なワークフローから着手して、段階的にエージェント型 AI を導入します。チームは、ガバナンスとオペレーションの成熟度が向上するのに応じて、スクリプト化された自動化と AI 支援分析から、より自律的なワークフローへと移行します。

エージェント型 AI の特徴

エージェント型 AI は、目標を自律的に追求して変化する状況に適応することから、従来の機械学習モデル、生成 AI、自動化ツールとは異なります。これは、主にデータを分析して予測を行うものの、その分析情報に基づいて措置を講じることはない、従来の機械学習モデルとは異なります。生成 AI は会話形式の入力に応じてコンテンツを作成しますが、結果の精度を高めるには、人がプロンプトを与え続ける必要があります。また、セキュリティ オーケストレーション自動対応 (SOAR) プレイブックなどの自動化ツールは、事前定義されたワークフローとルールに従うものです。これに対して、エージェント型 AI は、最小限の人の介入で複数ステップのタスクを実行します。

エージェント型 AI の主な特徴は、次のとおりです。

  • 自律性。エージェント型 AI システムは、人による継続的な監視から、定義された境界内でのより自律的な実行まで、さまざまなレベルで人が関与しながら運用できます。
  • 目標指向。脅威の検出、脆弱性の軽減、セキュリティ態勢の改善など、定義された成果を積極的に追求します。
  • 推論と計画。複数ステップのプロセスを調整し、一連のアクションを体系的に推論して、目標を達成するための計画を作成できます。
  • 記憶。エージェント型システムは、過去のやり取り、イベント、決定からのコンテキストを保持するため、時間の経過とともに、より多くの情報に基づいた選択ができます。
  • 継続的な学習と適応。エージェント型 AI は、新しいデータから学習し、コンテキストに基づいて戦略を調整して、時間の経過とともに効果を高めます。

エージェント型 AI システムにおける人による監視

エージェント型 AI システムは、多くの場合、自律性と制御のバランスを取るために、人による監視を組み込んで設計されています。

サイバーセキュリティのためのエージェント型 AI に対する Microsoft のアプローチでは、これは、人のオペレーターがシステムの動作を監視して指示できる協調モデルとして設計されています。

よくある例として、以下のような場合が挙げられます。

  • 透明性の高い推論。 Microsoft のシステムは、基になるコンテキストと根拠と共に推奨事項を提供することで、アナリストがシステムの出力と意思決定パスを理解できるように支援します。
  • 承認と調整。 チームは、システムのアクションのレビュー、承認、却下、微調整を行い、フィードバックを組み込んで成果を継続的に向上させることができます。
  • 監査可能な制御。説明責任とコンプライアンス要件をサポートするために、ロールベースのアクセス、監査ログ、ワークフロー保護などのエンタープライズ セキュリティ制御によってアクティビティが管理されます。

エージェント型 AI のしくみ

エージェント型 AI は、変化する状況に動的に対応し、コンテキストに基づいて動作を調整できます。これは、エージェントが目標を達成するまで一連のステップを繰り返す、エージェント ループと呼ばれるプロセスによるものです。

認識 → 推論 → 計画 → 実行 → 学習

  • 認識。このシステムは、ログ、アラート、ユーザー アクティビティ、脅威インテリジェンス、接続されたツールとシステムのデータなどの情報を、環境から収集します。
  • 推論。情報の分析、パターンの特定、リスクの評価を行い、コンテキスト内でデータが何を意味するのかを判断します。
  • 計画。このシステムは、目標に基づいて、望ましい結果を達成するための一連のアクションを策定します。
  • 実行。エージェントは、ツール、システム、ワークフローと連携して、デバイスの分離、チケットの起票、アラートのエスカレーション、追加の証拠の収集などのタスクを実行します。
  • 学習。このシステムは、アクションの結果を評価し、フィードバック、新しいデータ、過去の結果を使用して、将来の意思決定と対応を改善します。

エージェント型 AI を効果的に機能させるには、単一エージェント システムとマルチエージェント システムのどちらを使用するかも決める必要があります。単一エージェント システムは、1 つのエージェントにタスクと意思決定の管理を任せます。ワークフローがコンテナ化されている傾向が強く、意思決定が一元化されている場合に適しています。ワークフローが複雑な場合や、異なる種類の専門知識が必要な場合は、サイバーセキュリティに特化した複数の AI エージェントが連携して共通の目標を目指すマルチエージェント システムを設定することがよくあります。

自律的な機能があっても、人による監視は依然として重要です。多くの組織では、機密性やリスクの高いアクションに対して、人が介入するチェックポイントと承認ゲートを使用し、ガバナンス、説明責任、運用管理の維持に役立てています。

エージェント型 AI、生成 AI、SOAR、従来の機械学習の比較

従来の自動化、生成 AI、エージェント型 AI のそれぞれの違いは、主要なディメンジョンで比較するとより明確になります。

ディメンション
従来の ML / SOAR
生成 AI
エージェント型 AI
自律性
ルールベース、スクリプト化
プロンプトに対して応答
定義済みの目標に対して自律的に動作
意思決定
事前定義済みのロジック
応答とコンテンツを生成
計画、推論、アクションを実行
学習静的なモデル、定期的な再トレーニング
コンテキスト内のみに限定され、永続的な学習はない
継続的で、コンテキストを認識した適応
人の関与
人がワークフローを実行
人がプロンプトを提供し、出力をレビュー
人が目標とガードレールを設定
一般的な SOC での用途
シグネチャ検出および SOAR プレイブック
アナリストの Q&A と要約
エンドツーエンドのトリアージ、ハンティング、対応

サイバーセキュリティにおいてエージェント型 AI が重要である理由

AI の採用が急速に進んでいるのは、残念ながら企業や政府だけではありません。脅威アクターはエージェント型システムを使用してサイバー攻撃の速度と規模を増大しており、次のような複数のサイバーセキュリティ上の課題が生じたり悪化したりしています。

  • 規模の課題。セキュリティ チームは、膨大な量のアラート、データの複雑化、継続するアナリスト不足に直面することが少なくありません。
  • 速度の課題。 サイバー攻撃者がますますオペレーションを自動化する中で、多くの防御側は、依然として手動のトリアージとインシデント対応プロセスに依存しています。
  • 信頼性と精度の課題。 夜勤による継続的な負担と大量の反復的なタスクのために、アナリストが疲弊しかねず、不整合や人為的ミスのリスクを高めます。
  • 回復性の課題。現代の組織は、クラウド プラットフォーム、エンドポイント、ID、アプリケーション、サードパーティ サービスを含むハイブリッド環境にわたって業務を遂行しています。このように攻撃面が広がることで、運用リスクが高まり、サイバー攻撃者にとっては機会が増えます。

完全に手動のセキュリティ オペレーション (SecOps) にとっては複雑すぎて変化が速く、相互接続も進んでいる環境では、サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI こそが、セキュリティ チームのよる効果的な運用に役立ちます。これは、AI システム自体の保護に重点を置く、より広範なエージェント型 AI セキュリティとは異なります。

サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI の利点

エージェント型 AI は、セキュリティ チームに代わるものではなく、サイバーセキュリティのオペレーション全体で相乗効果を発揮し、次のような利点をもたらします。

  • 平均検出時間と平均応答時間 (MTTD/MTTR) を短縮。エージェント型 AI は、アラートの調査、シグナルの関連付け、対応アクションの調整をすばやく行い、検出と対応にかかる時間の短縮を支援します。
  • アナリストの疲労を軽減し、高付加価値の作業に充てる時間を増加。エージェント型 AI は、反復的で時間のかかるタスクを処理することで、アラート疲れの軽減に役立ち、アナリストがより戦略的な調査と意思決定に集中できるようにします。
  • 一貫した反復可能なトリアージと対応。エージェント型 AI は、インシデント全体でワークフローとプロセスを一貫して適用し、手動オペレーションによるばらつきを減らして運用の信頼性を向上させます。
  • 24 時間 365 日のカバレッジと柔軟な拡張性を提供。人間のチームとは異なり、エージェント型 AI は継続的に稼働し、追加の人員を必要とせずに大量のアラート、イベント、データを処理できるように拡張できます。
  • シグナル対ノイズ比および優先順位付けの向上。エージェント型 AI は、大量のコンテキスト データを分析して最も重要な脅威を特定し、不要なアラートを減らして優先順位付けを改善できます。
  • 回復力の強化と予防的なリスク管理。エージェント型 AI は、環境を継続的に監視して、潜在的な弱点を特定し、組織のリスク軽減とオペレーションの回復力向上を長期的に支援する予防的なセキュリティ対策をサポートできます。

セキュリティ オペレーションにおけるエージェント型 AI の主なユース ケース

いくつかのユース ケースで、セキュリティ強化のために人とエージェントがどのように連携できるのかを示しています。

アラートのトリアージと優先順位付け

セキュリティ チームは、手動では調査しきれない数のアラートに直面することが多く、効果的な対応には優先順位付けが不可欠です。

エージェントの役割:

  • 脅威インテリジェンス、アセットのコンテキスト、ユーザー行動データによるアラートのエンリッチメントを実現します。
  • リスクと信頼度スコアに基づいてインシデントの優先順位を付けます。
  • 調査または修復の次の手順を推奨します。

アナリストの役割:

  • 優先度の高いインシデントをレビューします。
  • 分析結果とエスカレーションの判断を確認します。
  • 複雑な調査や機密性の高い調査を処理します。

脅威インテリジェンス

セキュリティ チームは大量の脅威データを使用しているため、関連性があり実行可能な分析情報をすばやく抽出することが困難です。

エージェントの役割:

  • 複数のソースから脅威インテリジェンスを収集して要約します。
  • リアルタイムの状況把握と迅速なレポート作成を提供します。
  • 環境全体で脅威アクティビティを関連付けます。

アナリストの役割:

  • 戦略的リスクと脅威の傾向を解釈します。
  • インテリジェンスの関連性と影響を確認します。
  • 対応の優先順位と計画を指示します。

サイバー脅威の追求

隠れた脅威や新たに発生する脅威を特定するには、大規模で複雑なデータセット全体にわたる継続的な分析が必要です。

エージェントの役割:

  • ハンティングの仮説を生成し、データ ソースに対してクエリを実行します。
  • 大規模なデータセットを繰り返し分析して、不審なアクティビティを特定します。
  • 新たに発生する脅威を対象に、バックグラウンドで継続的にハンティングを実行します。

アナリストの役割:

  • 分析結果を確認し、ビジネスへの影響を判断します。
  • 高度なサイバー攻撃や標的型サイバー攻撃のアクティビティを調査します。
  • ハンティング戦略と優先順位の精度を高めます。

インシデント対応とエンドポイントの修復

セキュリティ インシデントへの対応では、検出、調査、封じ込めのアクティビティをすばやく連携させる必要があります。

エージェントの役割:

  • 証拠の収集とインシデントのドキュメント化を自動化します。
  • タイムラインを作成し、サイバー攻撃のアクティビティを要約します。
  • アナリストの承認を得て、封じ込めアクションを完了します。
  • エンドポイント保護と脆弱性修復ワークフローの自動化を支援します。

アナリストの役割:

  • リスクの高い対応アクションを承認します。
  • 修復と復旧の措置を統括します。
  • 意思疎通とインシデント後のレビューを調整します。

脆弱性と露出の管理

組織は、脅威アクターに悪用される前にセキュリティ上の弱点を特定し、優先順位を付ける必要があります。

エージェントの役割:

  • リスクのレベルと、リスクにさらされている資産の価値に基づいて、脆弱性の優先順位を付けます。
  • クラウド、エンドポイント、ID 環境全体で露出を特定します。
  • 修復パスと軽減アクションを推奨します。

アナリストの役割:

  • ビジネス リスクに基づいて修復の優先順位を決定します。
  • 推奨アクションを確認します。
  • パッチ適用とリスク軽減の措置を調整します。

ID とアクセスのセキュリティ

ID アクティビティの監視は、不正アクセスの検出と特権の悪用防止に不可欠です。

エージェントの役割:

  • 通常とは異なるサインインとアクセスのパターンを検出します。
  • リスクの高いアクセス許可と特権エスカレーションのリスクを特定します。
  • ID 関連の脅威を継続的に監視します。

ID およびアクセス管理者の役割:

  • リスクの高いアクセス イベントをレビューします。
  • ポリシーまたはアクセス許可の変更を承認します。
  • 内部関係者またはアカウントの侵害に関する潜在的なアクティビティを調査します。

セキュリティ エンジニアリングと検出開発

セキュリティ チームは、進化する脅威に後れを取らないように、検出ロジックを継続的に構築し、改善する必要があります。

エージェントの役割:

  • 検出ロジックを作成してテストします。
  • 検出のカバレッジを確認し、ギャップを特定します。
  • 誤検知を減らすためのチューニング改善を提案します。

アナリストの役割:

  • 検出の更新をレビューして承認します。
  • 検出と組織の優先事項を調整します。
  • 長期的なセキュリティ アーキテクチャと戦略を統括します。

データ セキュリティとコンプライアンス

機密データを保護するには、継続的な監視、分類、セキュリティ ポリシーの適用が必要です。

エージェントの役割:

  • データ損失防止とインサイダー リスクを調査し、優先順位を付けます。
  • 環境全体で機密データ リスクの検出と分析を自動化します。
  • ポリシー違反とコンプライアンスのギャップを特定します。

データ セキュリティ管理者の役割:

  • リスクの高いデータ漏えいイベントをレビューします。
  • コンプライアンスとガバナンスの要件を判断します。
  • 修復とポリシー適用に関する判断を統括します。

エージェント型 AI とサイバーセキュリティのワークフローの統合方法

サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI は、環境全体にわたってチームがデータを分析し、アラートのエンリッチメントを実現して、脆弱性や脅威に対応できるようにすることで、最も大きな価値を発揮します。そのために、組織は API を使用して、既に使用しているツールにセキュリティ エージェントを接続します。たとえば、SOAR、拡張検出と応答 (XDR)、クラウド セキュリティ態勢管理 (CSPM)、ID およびアクセス管理 (IAM)、セキュリティ情報イベント管理 (SIEM)、エンドポイントでの検出と対応 (EDR) ツール、チケット管理ソリューションなどです。これにより、エージェント型 AI システムは、情報の取得、ワークフローの調整、アクションのトリガー、システムの更新をリアルタイムで実行できます。

自動化によってチームの時間を大幅に節約できますが、意図しない操作を防ぐために、制御と説明責任を維持することも重要です。セキュリティ チームでは通常、リスクの高い判断はアナリストによるレビューが必要ですが、リスクの低いアクションでは、より高い自律性を許可します。いずれの場合も、承認されたシステムとデータとの間でのみ AI によるやり取りが行われるように、データ ガバナンスとアクセス制御を確立することが重要です。

成功の測定: 指標と ROI

エージェント型 AI で高い成果を上げているセキュリティ チームは、目標をどれだけ達成できているかを評価するための測定ツールを導入しています。これにより、実装を調整、改善するために必要な情報が得られます。

重要な成功指標には次のものがあります。

オペレーションに関する指標

セキュリティ オペレーションの効果の測定に役立つデータには、次のものがあります。

  • MTTD と MTTR。
  • 自動でトリアージまたはクローズされたアラート数。
  • 誤検知率の低減。
  • インシデントの調査と解決にかかる時間。

人員に関する指標

これらの指標により、エージェント型 AI がセキュリティ チームの時間の使い方をどのように変えているかを、経営者が把握できます。

  • 手動での調査とトリアージから解放されたアナリストの時間。
  • アナリストの介入が必要なアラートのエスカレーション率。
  • AI に支援されたワークフローを使用する新しいアナリストのオンボーディング完了までの時間。
  • 反復的なタスクや価値の低いタスクの削減。

ビジネスに関する指標

経営者は、次のような指標から、セキュリティの改善が組織全体に与える影響も確認できます。

  • セキュリティ インシデント 1 件あたりのコスト。
  • 環境、ID、エンドポイント、クラウド リソース全体でのカバレッジ
  • 全体的なコンプライアンス態勢と監査の準備状況。
  • 長期的な運用リスクに対する露出の低減。

リスク、制限事項、安全性に関する考慮事項

エージェント型システムは自律性のレベルがさまざまであるため、安全に展開するには、ガバナンス、透明性、制御が不可欠です。

運用上および技術上のリスク

  • シャドー エージェントと管理されていない自動化。エージェント型システムの規模が拡大すると、組織では、管理されていないエージェントや重複したエージェントが意図せず作成されることがあります。適切に統括しないと、こうした "シャドー エージェント" によって、一貫性のない動作や承認されていないアクションが生じる可能性があります。
  • ハルシネーションと誤検知。他の AI システムと同様、エージェント型 AI でも、誤った結論を出したり、データを誤って解釈したりすることがあり、検証が行われないと不必要なアラートや誤ったアクションにつながるおそれがあります。
  • 過剰な自動化と統括の不在。自動化に過度に依存すると、判断プロセスの可視性が低下し、コンテキストの見落としや不適切なアクションのリスクが高まります。
  • データ プライバシーとアクセス制御。エージェント型 AI システムは機密性の高いセキュリティ データへのアクセスを必要とするため、アクセス許可、データ境界、最小特権アクセスに関する厳格な制御が重要です。
  • モデル ドリフトと敵対的操作。時間の経過とともに、環境の変化に伴ってモデルのパフォーマンスが低下する可能性があります。さらに、サイバー攻撃者が入力やメトリックを操作して、エージェントの動作に影響を与えようとする可能性があります。

規制およびコンプライアンスに関する考慮事項

  • NIST AI リスク マネージメント フレームワーク (AI RMF) では、ガバナンス、マッピング、測定、管理を含む、AI 関連のリスクをライフサイクル全体で管理するためのガイダンスが提供されています。
  • ISO/IEC 42001 は、AI 管理システムの要件を定め、AI システムの責任ある開発と使用に重点を置いています。
  • EU AI 規制法は、欧州連合内で動作する、または欧州連合に影響を与える AI システムに対して、リスクベースの分類とコンプライアンス要件を導入します。
  • 業界固有の規制は、医療データ保護に関する医療保険の携行性と責任に関する法律 (HIPAA)、決済セキュリティに関する Payment Card Industry Data Security Standard (PCI DSS)、財務報告の統制に関する米国企業改革法 (SOX) など、特定の業界に固有の要件です。

責任あるエージェント型 AI 戦略の設計

セキュリティ チームが組織全体にわたってサイバーセキュリティのためのエージェント型 AI を展開し、規模を拡大する際には、熟慮した戦略を策定することで、複数のチームにわたって透明性、説明責任、信頼を維持しながら、セキュリティの成果を向上させるのに役立ちます。

安全な展開のための原則

組織は通常、最初はリスクの低い支援目的のユース ケースから始め、徐々に影響の大きいアクションへと、制御された段階を踏んでエージェント型 AI を導入します。セキュリティ エージェントがどのように決定を下すのかについて、透明性を優先することも重要です。

ガードレールと承認ワークフロー

明確に定義されたガードレールは、エージェントの動作を安全で想定された範囲に制限するのに役立ちます。予期しない動作のリスクを減らすために、サイバーセキュリティのための AI エージェントが自律的に完了できるアクションを定義し、影響の大きい操作や機密性の高い操作に対する承認ワークフローを確立します。また、セキュリティ エージェントがアナリストにエスカレーションする必要がある場合のしきい値を設定します。

AI エージェントのロールベース アクセス

ロールベースのアクセス制御 (RBAC) は、エージェントのアクセスを、その特定の機能に必要なシステム、データ、アクションに制限することで、意図しないアクティビティのリスクを軽減します。このため、ID チームは、人と同様にエージェントにも最小特権の原則を適用します。

エージェントのアクションの監視と監査

エージェントの動作を可視化するため、セキュリティ チームは、判断、ツールの使用、結果を含むすべてのエージェント アクションをログに記録し、監査します。これにより、インシデントの調査、コンプライアンス要件の遵守、微調整が必要な実装上の問題の検出に役立ちます。

アナリストとの信頼構築

アナリストは、十分な情報を得て制御できていると感じれば、エージェント型 AI の採用に前向きになります。組織は、エージェントの推奨事項を明確で理解しやすくすることで、信頼を構築できます。また、アナリストの判断を置き換えるのではなく補完するように AI を使用すると、より高い成果を得られます。

部門横断的な連携

セキュリティ オペレーション センター (SOC)、IT、コンプライアンスのすべてのチームが、エージェント型 AI を安全かつ効果的に、組織のリスク許容度に沿って展開するうえで役割を果たします。部門横断型のチームは、組織が運用ユース ケースを定義し、統合とインフラストラクチャを管理し、規制要件を遵守するのに役立ちます。

自動化からエージェント型セキュリティへ

セキュリティ ドメイン全体で機能する完全なエージェント型ワークフローの構築は、複数の段階からなるプロセスです。組織の運用成熟度が高まるにつれて、より強力なガバナンスと統括が必要になります。

第 1 段階: スクリプト化された自動化

最初の段階では、組織は事前定義済みのスクリプトとワークフローを使用して、反復的なセキュリティ タスクを処理します。

成功のイメージ:

  • アラートのエンリッチメントやチケット作成など、定型タスクを一貫して完了できます。
  • 複雑度の低いワークフローでの手作業が軽減されます。
  • 静的なルールとプレイブックを使用できます。

準備状況に関する指標:

  • 安定した SIEM、SOAR、チケット発行システムの統合。
  • 明確に定義された、反復可能なセキュリティ プロセス。
  • 大量の反復的なアナリスト タスク。

第 2 段階: AI の支援による分析

この段階では、AI は、可視性、要約、判断を改善することでアナリストを支援しますが、直接的なアクションは実行しません。

成功のイメージ:

  • AI が生成した要約と分析情報により、調査が迅速化されます。
  • アラートが分かりやすくなり、コンテキストのエンリッチメントが行われます。
  • 判断とアクションについては引き続きアナリストが完全に責任を負います。

準備状況に関する指標:

  • 成熟したデータ パイプラインと一元化された指標。
  • 確立されたセキュリティ オペレーション プロセス。
  • より迅速なトリアージと調査支援の必要性。

第 3 段階: 半自律型エージェント

この段階では、定義されたガードレールの範囲内でエージェント型 AI が限定的なアクションを開始し、リスクの高いオペレーションについては人が承認権限を維持します。

成功のイメージ:

  • トリアージ、エンリッチメント、推奨される修復手順が自動化されます。
  • 反復的な調査タスクにおけるアナリストの負荷が軽減されます。
  • 封じ込めと修復アクションに対する、人による承認。

準備状況に関する指標:

  • 自動化システム向けの強力な ID およびアクセス制御。
  • 明確に定義されたエスカレーションと承認ワークフロー。
  • データ品質とシステム統合への高い信頼度。

第 4 段階: 完全なエージェント型ワークフロー

最も成熟した段階では、エージェント型 AI は複数の領域をまたいで動作し、確立された境界内でアナリストの介入を最小限に抑えながらアクションを調整します。これにより、組織全体でエンドツーエンドのセキュリティ オーケストレーションが可能になります。

成功のイメージ:

  • 環境全体で、継続的かつ自律的に検出、調査、対応を実行します。
  • セキュリティ、IT、ID、コンプライアンス システム間でのクロスドメイン連携。
  • 担当者は、ガバナンス、戦略、例外対応に集中します。

準備状況に関する指標:

  • AI と自動化のための成熟したガバナンス フレームワーク。
  • システム全体での高信頼性の指標とデータ整合性。
  • セキュリティ、IT、コンプライアンスの各チーム間の強力な部門横断的連携。
  • 監査可能性と統括のもとで自動化された判断に対する、確立された信頼。

サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI のトレンド

エージェント型 AI はまだ普及曲線の初期段階にありますが、セキュリティ全体での進化を形作る明確なトレンドがいくつかあります。

  • 自律型レッド チーミング。AI エージェントは、敵対者の行動を継続的にシミュレートして、防御のテスト、弱点の特定、セキュリティ制御の検証をリアルタイムで実行するようになります。
  • エージェント ループ。 セキュリティ オペレーション向けのエージェント型 AI は、エージェントが結果を認識、実行、学習して、検出と対応の精度を高めることで、より継続的で自己改善型になります。
  • AI 間のサイバー競合。 サイバー攻撃者も AI を採用するため、将来のサイバー エンゲージメントでは、防御側と攻撃側のエージェント型システムが直接競合する可能性があります。
  • 予測的防御。エージェント型システムは、インシデントに対応するのではなく、パターン、露出データ、攻撃者の行動を分析することで脅威を予測し、発生前にサイバー攻撃を防ぎます。
  • 協調型 AI エージェント。複数の専門エージェントが、検出、調査、修復、レポート作成などのタスク間で連携し、より拡張性が高く回復力のあるセキュリティ ワークフローを実現します。
  • 変化するアナリストの役割。アナリストは、反復的な調査と対応のタスクから次第に離れ、エージェントの統括、ポリシー設計、戦略的なリスク管理など、より価値の高い責務へと移行します。

Microsoft Security とエージェント型 AI

Microsoft の統合された AI 搭載セキュリティ プラットフォームにより、組織はデジタル資産全体で脅威を検出、調査、対応できます。中心となるのは Microsoft Security Copilot です。これは、自然言語に対応した、AI の支援によるセキュリティ ソリューションであり、アナリストがインシデントの分析、脅威の要約、環境全体での対応アクションの調整を行えるようにします。埋め込みエージェントが、Microsoft Security ソリューション全体でこれらの機能を拡張します。

Microsoft Defender XDR: エージェント型 SOC オペレーション

セキュリティ チームは、アラートの多さ、手動のトリアージ、断片化された調査の重圧にさらされがちです。Microsoft Defender XDR では、高リスクの問題の優先順位付け、インシデントの迅速な調査、対応効率の向上をエージェント型 AI が支援します。

  • セキュリティ アラート トリアージ エージェント: アラートに優先順位を付けてノイズを減らし、アナリストが高リスクのインシデントにより早く集中できるようにします。
  • セキュリティ アナリスト エージェント: インシデントの調査、シグナルの関連付け、対応アクションの推奨により、SOC のワークフローを効率化します。
  • 脅威の捜索エージェント: 環境全体を検索し、隠れた脅威、疑わしい動作、新たな攻撃パターンを明らかにします。
  • 動的脅威検出エージェント: アクティビティを継続的に分析し、検出ロジックを適応させて、進化する脅威や異常を特定します。
  • 脅威インテリジェンス ブリーフィング エージェント: 脅威インテリジェンスを実用的な分析情報に要約し、チームが新たなリスクを先取りできるようにします。

これらのエージェントを組み合わせることで、手動の調査を減らし、エンドポイント、ID、メール、クラウド ワークロード全体でのインシデント対応を迅速化できます。

Microsoft Sentinel: AI の支援による検出、ハンティング、オーケストレーション

Microsoft Sentinel では、手動の調査から、自然言語によるプロンプトブックに基づくワークフローに移行できるように、Security Copilot がアナリストを支援します。アナリストは、KQL の生成、インシデントの要約、エンティティのエンリッチメント、ユーザーとデバイスの分析、Logic Apps とプロンプトブックを使用した調査手順の自動化を行えます。

カスタムの Sentinel インシデント レポート エージェントは、インシデントから分析結果、エンティティ、インサイト、修復手順を抽出できます。プロンプトブックを使用すると、ユーザー分析を自動化し、結果をインシデント アクティビティ ログに直接追加することもできます。

これらの機能は、反復的なタスクを自動化することで、手動のクエリ作成を減らし、調査の一貫性を高め、アナリストの時間を節約します。

Microsoft Purview: エージェント型データ セキュリティとコンプライアンス

Microsoft Purview では、Security Copilot が、データ セキュリティ態勢管理、データ損失防止、インサイダー リスク管理、電子情報開示、監査、コミュニケーション コンプライアンスにわたって、データの保護とガバナンスを支援します。

  • データ セキュリティ トリアージ エージェント: DLP とインサイダー リスクに関するアラートに優先順位を付け、リスクのコンテキストを説明し、必要に応じてデータ所有者との修復ワークフローを開始できます。
  • データ セキュリティ態勢エージェント: 機密データの検出、隠れたリスクと露出した資格情報の特定、機密度ラベル付けの改善し、役員向けの要約の生成を行います。

これらのエージェントは、セキュリティ チームが手動のトリアージを減らし、重大なリスクの優先順位付けを迅速化し、データ セキュリティとコンプライアンスのオペレーションを強化するのに役立ちます。

Microsoft Entra: ID およびアクセス エージェント

Microsoft Entra では、リスクのあるユーザー、異常なサインイン、特権アクセス、ID ベースの脅威の調査を Security Copilot が支援します。Copilot は、ID のコンテキストを要約、リスク シグナルを説明するほか、セッションの失効、アクセス レビュー、条件付きアクセス ポリシーの調整などのアクションを推奨することができます。

機能には、ID およびアクセス エージェント、Microsoft Entra エージェント ID が含まれます。これは、ライフサイクル管理、アクセス ガバナンス、ID 保護の制御を使って、AI エージェントの登録、管理、ガバナンスを支援します。

これらの機能は、組織が ID リスクを低減し、人間と AI の両方の ID にゼロ トラストの原則を適用するのに役立ちます。

Microsoft Intune: エンドポイント管理エージェント

Microsoft Intune では、デバイス コンプライアンス、構成のずれ、脆弱性の露出、修復の必要性をエンドポイントと IT チームが把握できるように Security Copilot が支援します。Copilot は、デバイスのリスクを要約し、不適合の問題を説明するほか、次の手順を推奨して、チームの迅速な対応を支援します。

エンドポイント管理エージェントは、コンプライアンス チェックの自動化、デバイスの問題の調査、管理対象エンドポイントにわたる修復の指示を支援します。

これらの機能によって、手動でのエンドポイント調査が減り、コンプライアンス オペレーションが向上し、構成のギャップをより早く解消するのに役立ちます。

Microsoft Security Copilot と埋め込みエージェントを組み合わせることで、組織は、事後対応型の手動によるセキュリティ オペレーションから、セキュリティ ライフサイクル全体で保護、速度、拡張性を高める、AI の支援による適応型防衛に移行できます。

よく寄せられる質問

  • エージェント型 AI とは、最小限のプロンプトを使用して定義された目標を追求する、自律性と推論能力を備えた AI システムを指します。これらのシステムは、従来の自動化とは異なり、変化する状況に適応し、複数ステップのワークフローを計画して、結果から継続的に学習してパフォーマンスを向上させることができます。
  • 生成 AI は、テキスト、要約、コードなどのコンテンツを、プロンプトに応じて作成するのに対し、エージェント型 AI は、定義されたセキュリティ目標を達成するために計画を立て、アクションを実行します。
  • サイバーセキュリティにおけるエージェント型 AI とは、データの自律的な分析、異常の調査、セキュリティ ワークフローのエンド ツー エンドのオーケストレーションを実行するエージェントを展開することを意味します。
  • セキュリティにおけるエージェント型 AI の一般的な例として挙げられるのは、SOC アラート トリアージ エージェントです。これは、コンテキスト データによるセキュリティ アラートのエンリッチメントを自動的に行い、リスク スコアを算出して、軽減策に向けた次の手順を推奨します。
  • セキュリティ オーケストレーション自動対応 (SOAR) ソリューションは、事前定義済みの静的なプレイブックを使用して対応アクションを自動化するため、手順への依存度が高く、柔軟性に限界があります。これに対し、エージェント型 AI は、コンテキストの分析、ワークフローの動的な調整、継続的な学習を行うことで、厳格なオーケストレーション ルールに依存せずに、複雑なサイバー攻撃シナリオや新しいサイバー攻撃シナリオに対応できます。

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