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2026/07/14

伊藤忠商事が Azure を基盤とした生成 AI プラットフォームを構築、グループ全体で 26,000 人以上が利用し年間 227 万時間以上の業務時間を削減

160 年以上の歴史を持ち、世界 60 か国 / 約 90 の拠点で多岐にわたるビジネスを展開する伊藤忠商事。生成 AI に関しては「これまでの縦割りの産業構造を大きく変革するものであり、リスクではなく大きなビジネス チャンス」だと捉えており、2023 年 5 月には生成 AI の活用を推進する全社組織「生成 AI ラボ」を設立しています。さらにその 2 か月後には、生成 AI プラットフォーム「I-Colleague」の運用を開始。その活用領域を段階的に拡大しています。

I-Colleague の基盤として採用されているのが Azure です。機密情報を扱える高いセキュリティや、すでに使い慣れていたことが高く評価されました。この上で汎用的な生成 AI 機能のみならず、「個別業務向け専門機能」も提供。その 1 つである「事業投資向け AI 機能」では、投資対象となる企業調査や分析、社内申請の効率化に加えて、事業投資の経験が少ない社員でも即戦力化しやすくなる、といった効果をもたらしています。

グループ全体で 26,000 以上の社員が活用しており、業務時間削減効果は年間 227 万時間以上。しかしそれ以上に重要なのが、AI を日常的に活用することで、社員一人ひとりの「先読み力」が高まり、状況の変化を柔軟に捉え、業務の在り方や新たな価値創出に積極的に取り組めるようになったことです。今後は、全方位的に AI トランスフォーメーション (AIX) を進め、自立型 AI エージェントの実装などを通じて、業務効率化・生産性向上を図り、その先の「業態変革 」へとつなげていくことを目指しています。

ITOCHU Corporation

効率化にとどまらない業態変革のため「I-Colleague」を構築

1858 年に初代伊藤忠兵衛が創業して以来、160 年以上の歴史を持つ大手総合商社である伊藤忠商事株式会社 (以下、伊藤忠商事)。現在は世界 60か国に約 90 の拠点を構え、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融、生活消費分野といった多岐にわたる分野で、国内取引、輸出入、三国間取引、国内外での事業投資など、幅広いビジネスを展開しています。掲げているグループ企業理念は「三方よし」。ステークホルダーの期待に応えながら、持続可能な社会への貢献を目指しています。

生成 AI への取り組みも積極的に進められています。2025 年の社長年始挨拶では、約 3 分の 1 が生成 AI 関連の内容であり、社員の意識改革には大きな影響となりました

その背景にある考え方について「生成 AI はこれまでの縦割りの産業構造を大きく変革するものであり、リスクではなく大きなビジネス チャンスだと捉えています」と語るのは、伊藤忠商事 IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室で室長を務める黄瀬 貴信 氏。社員一人ひとりがこの変化を先読みし、AI を自分の武器として未来のビジネスを作り出せるようにするためには、AI を身近なものにすることが出発点だと言います。「商人に不可欠な『情報収集力』『処理力』『先読み力』を AI によって底上げし、『マーケティング力』を強化することで、業務効率化にとどまらない業態変革や新たなビジネス創出を目指しています」。

このビジョンのもと、2023 年 5 月に生成 AI の活用を推進する全社組織「生成 AI ラボ」を設立。同年 7 月には、社内のセキュアな環境で利用できる専用の生成 AI プラットフォーム「I-Colleague」の運用を開始しているのです。

黄瀬 貴信 氏, IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室 室長, 伊藤忠商事株式会社

“目指しているのはトレード、事業投資、人事・経理といったあらゆる業務プロセスに、自律型 AI エージェントの実装を進め、業務効率化・生産性向上を図ること、さらにその先に「業態変革 (AIX) 」へとつなげていくこと。これは非常にチャレンジングな試みです。その体制を築くため、Microsoft Fabric や AI エージェント技術を積極的に活用し、共に新しいビジネスの形を作っていきたいと考えています。”

黄瀬 貴信 氏, IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室 室長, 伊藤忠商事株式会社

Azure を活用しわずか 2 か月で立ち上げ、その後も段階的に機能を拡張

運用当初は Azure OpenAI in Foundry Models の ChatGPT をベースに、翻訳、要約、議事録作成といった、全社員が使える「汎用業務機能」の提供からスタート。2024 年に入ってからは活用の幅を大幅に拡大し、社内イントラネットなどと連携する RAG (検索拡張生成) 機能の導入によって、自社データに基づく回答精度を向上させています。また 2024 年 4 月には、国内グループ会社向けの「G-Colleague」、7 月には海外拠点向けに「CISD-Agent」のサービスも開始しています。さらに、汎用業務機能については、最新のAIモデルがリリースされ次第、即時に反映することで、常に最先端の技術を活用できる環境を実現しています。

その一方で、過去の知見を参照した事業投資の相談・稟議書チェックや、顧客への商材提案の支援など、「個別業務向け専門機能」の開発・展開も本格化。汎用機能による効率化を超えた効果をもたらしています。

さらに 2025 年には、社内に蓄積された経営情報やノウハウと AI を掛け合わせることで、「稼ぐ」領域にも貢献する経営支援 AI プラットフォームへと進化。AI エージェントの開発・実装も進められています。

そのシステム全体像は図 1 に示す通りです。主に Azure の伊藤忠テナント内でシステムが構築されており、これが Microsoft 365 や Azure OpenAI in Foundry Models、各種 SaaS などと連携しています。Azure をシステム基盤に選んだ理由について、伊藤忠商事 IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室の龍田 力 氏は次のように説明します。

「I-Colleague の基盤として Azure を選択した理由は、大きく 2 つあります。第 1 はセキュリティやガバナンスの観点から、閉域化されたセキュアな環境で機密データの安全性を担保できると、技術チームに評価されたこと。第 2 は、当社がもともと Azure をメインに、システム開発やインフラ構築を行ってきた経緯があったことです。使い慣れた技術を活用することで、約 2 か月という短期間でのリリースを実現できました」。

龍田 力 氏, IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室, 伊藤忠商事株式会社

“I-Colleague の基盤として Azure を選択した理由は、大きく 2 つあります。第 1 はセキュリティやガバナンスの観点から、閉域化されたセキュアな環境で機密データの安全性を担保できると、技術チームに評価されたこと。第 2 は、当社がもともと Azure をメインに、システム開発やインフラ構築を行ってきた経緯があったことです。使い慣れた技術を活用することで、約 2 か月という短期間でのリリースを実現できました。”

龍田 力 氏, IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室, 伊藤忠商事株式会社

事業投資向け専門機能では経験の浅い社員でも早期戦力化が可能に

これらの取り組みの中で特に興味深いのが、「個別業務向け専門機能」だといえるでしょう。そのうちの 1 つとして挙げられたのが、事業投資関連の AI 機能群です。

「当社は『投資なくして成長なし』を掲げており、M&A などの事業投資による事業拡大を、経営の重要な柱に据えています」と語るのは、伊藤忠商事 IT・デジタル戦略部 デジタル戦略室でプロジェクトマネジャーを務める八尋 練 氏。しかし現場の社員は日々の営業や事業管理に従事する傍ら、成長投資の機会を追う事が求められ、必ずしも事業投資の専門人材がいるわけではないのだと説明します。「そこで知識の差を埋め、若手も含めた全社員が質の高い投資検討を行えるようにするため、生成 AI を用いた支援機能が構築されました」。

その概要を示したのが図 2 です。投資プロセスを「対象企業の発掘」「ターゲット企業の深掘調査」「社内申請準備」の 3 ステップに分け、それぞれを AI がサポートしています。

まず調査フェーズ (対象企業の発掘~ターゲット企業の深掘調査) では、社内情報源や外部データベースと連携し、初期検討に必要な対象企業の詳細情報を提供。「社内申請準備」フェーズでは、過去の失敗の教訓や投資論点などを RAG 技術で参照し、AI が壁打ち相手となってアドバイスを返す「事業投資を相談」機能と、作成した稟議書に過去の論点からの漏れがないかをチェックリスト形式で確認する「投資申請書をチェック」機能を提供しています。

「事業投資における 3 ステップそれぞれで生成 AI を活用することで、従来は情報収集や論点整理、申請準備などに多くの時間を要していた投資関連業務が大幅に効率化されました。しかしそれ以上に重要なのが、投資経験の浅い社員でも質の高い申請書を作成できるようになり、早期戦力化に大きく貢献していることです。部署によってバラつきがあった『見るべき論点』の目線が統一され、審査側の指摘の手間も減少、案件精度の向上が実現されています。さらに、最終的な投資判断は経営が行うが、生成 AI により『豊富かつ質の高いパイプラインづくり』を進め、選りすぐった案件への投資を通じて企業価値向上の確度をさらに高めることを目指しています」(八尋 氏)。

伊藤忠商事ではこの他にも、多岐にわたる AI 機能が提供されています。G-Colleague なども含むグループ全体での利用者数は 26,000 人を突破。合計で年間 227 万時間以上 (約 1,263 人相当) の業務時間削減が達成されています。

八尋 練 氏, IT・デジタル戦略部 デジタル戦略室 プロジェクトマネジャー, 伊藤忠商事株式会社

“事業投資における 3 ステップそれぞれで生成 AI を活用することで、従来は情報収集や論点整理、申請準備などに多くの時間を要していた投資関連業務が大幅に効率化されました。しかしそれ以上に重要なのが、投資経験の浅い社員でも質の高い申請書を作成できるようになり、早期戦力化に大きく貢献していることです。部署によってバラつきがあった『見るべき論点』の目線が統一され、審査側の指摘の手間も減少、案件精度の向上が実現されています。”

八尋 練 氏, IT・デジタル戦略部 デジタル戦略室 プロジェクトマネジャー, 伊藤忠商事株式会社

啓蒙施策も積極的に展開、今後はあらゆる業務に自立型 AI エージェントを標準実装

伊藤忠商事の AI 活用を大きく後押ししているのは、I-Colleague の存在だけではありません。啓蒙施策が積極的に行われていることも、見逃せないポイントだと言えるでしょう。

これについて「伊藤忠商事では生成 AI の活用を全社に定着させるため、『意識改革』を重視した多角的な啓蒙施策を展開しています」と語るのは、伊藤忠商事 IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室で室長代行を務める市橋 加代 氏です。2025 年の社長年始挨拶では、約 3 分の 1 が生成 AI 関連の内容であり、社員の意識改革には大きな影響となりました。

また、全社員を対象とした e-ラーニングや組織長向け研修、I-Colleague の機能拡張に合わせた説明会なども実施。その利用目的や有用性への理解を広げ続けています。その中でも特筆すべき取り組みが、2025 年 9 月に実施された「AI Challenge Month」です。

「AI Challenge Month では、社長からのメッセージや業務に役立つ Tips / 事例などの情報を発信する他、レベルやテーマ別の『ハンズオン研修』、AI ラボのメンバーに気軽に質問や相談ができる『AI 寺子屋』、外部有識者を招いた講演も開催しました。ハンズオン研修には述べ 700 名以上が参加。これらの活動によって、社員 1 人あたりの月間利用回数も約 4 倍へと、劇的に増加しています」(市橋 氏)。

2026 年度からは、o3-deep-research model を活用した内製エージェントや、用途に応じたマルチモデル環境の構築を進めていく予定。またそれらのデータ基盤としての Microsoft Fabric の活用や、エージェントの管理機能としての Microsoft Agent 365 の活用も検討されています。

「目指しているのはトレード、事業投資、人事・経理といったあらゆる業務プロセスに、自律型 AI エージェントの実装を進め、業務効率化・生産性向上を図ること、さらにその先に「業態変革 (AIX) 」へとつなげていくこと。これは非常にチャレンジングな試みです。その体制を築くため、Microsoft Fabric や AI エージェント技術を積極的に活用し、共に新しいビジネスの形を作っていきたいと考えています」(黄瀬氏)。

市橋 加代 氏, IT・デジタル戦略部DXプロジェクト推進室 室長代行, 伊藤忠商事株式会社

“AI Challenge Month では、社長からのメッセージや業務に役立つ Tips / 事例などの情報を発信する他、レベルやテーマ別の『ハンズオン研修』、AI ラボのメンバーに気軽に質問や相談ができる『AI 寺子屋』、外部有識者を招いた講演も開催しました。ハンズオン研修には述べ 700 名以上が参加。これらの活動によって、社員 1 人あたりの月間利用回数も約 4 倍へと、劇的に増加しています。”

市橋 加代 氏, IT・デジタル戦略部DXプロジェクト推進室 室長代行, 伊藤忠商事株式会社

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