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2026/07/13

Azure OpenAI in Foundry Models や Fabric などを活用し、業務を効率化する AI アプリを次々に開発、サイボウズが進めてきた挑戦の軌跡

「チームワークあふれる社会を創る」ことを理念に掲げ、チームワークを支えるソフトウェアを開発し続けているサイボウズ株式会社。そのカスタマー本部では、サポート センターの業務量のコントロールが難しく、人員増も現実的ではないことが課題になっていました。この課題解決の手段として AI に着目。2023 年 8 月には、Azure OpenAI in Foundry Models (以下、Azure OpenAI) を活用した AI アプリ開発プロジェクトがスタートしています。

最初に開発された「過去の問い合わせ履歴をチャットで回答する」AI アプリは、わずか 2 か月でリリース。その後も複数の AI アプリをリリースし、より多くのデータを効果的に活用するための「データの整理・構造化」を Microsoft Fabric などを活用しながら実施しています。2025 年 10 月には、電話の会話内容を自動要約する AI アプリもリリース。ここでは Microsoft Foundry を活用し、業務処理を自動的に実施するエージェント的な AI アプリが実現されています。

電話の会話を自動要約する AI アプリによって、月間 450 時間の工数を削減。今後はさらなる自動化により ACW (After Call Work:平均後処理時間) をゼロにし、月間 600 時間の工数削減を目指しています。また、将来的にはカスタマー本部以外が保有するデータも活用し、それらから得られるナレッジを開発部門やマーケティング部門にも届けられる仕組みも計画。このプロジェクトは 2026 年 1 月にスタートしており、Foundry や Fabric が積極的に活用されています。

Cybozu

「責任ある AI」の表明などを評価し Azure OpenAI を採用

「チームワークあふれる社会を創る」ことを理念に掲げ、チームワークを支えるソフトウェアを開発し続けているサイボウズ株式会社 (以下、サイボウズ)。同社が提供する製品・クラウド サービスは、中小企業から大企業まで業種を問わず、幅広く活用されています。また顧客の成功と「チームワークあふれる社会」の実現を目指し、導入支援や活用促進などの活動も積極的に展開。その役割の一端を担っているのが、サイボウズ カスタマー本部です。

「お客様からのお問い合わせやご要望はサポート センターで対応させていただいておりますが、ここでの大きな課題となっているのが、業務量のコントロールが難しいことです」と語るのは、サイボウズ カスタマー本部 カスタマーリレーション部で副部長を務める池田 淳 氏。しかし業務量のピークに合わせて人員を増やすことも、現実的ではないと説明します。

「この問題の解決手段として、以前から着目していたのが AI です。AI で業務を効率化できれば、より多くのお客様のお手伝いができるはずです。ChatGPT が登場して間もない 2023 年 1 月には、生成 AI 導入に向けた検討も本格的に始めていました」。

その後、生成 AI 活用のメリットやデメリットを具体化していきながら、導入後のビジョンを明確化。2023 年 8 月には、AI アプリ開発プロジェクトがスタートしています。そのための生成 AI として選ばれたのが、Azure OpenAI でした。その理由について池田 氏は、次のように説明します。

「マイクロソフトは生成 AI への取り組みが早く、この当時に生成 AI を使えるメガ クラウドは Azure しかありませんでした。またマイクロソフトは『責任ある AI の原則とアプローチ』というアナウンスも行っており、生成 AI 利用に伴うリスクを最小化しやすいことも評価しました。さらに、すでに社内で使っていた Microsoft Entra ID を利用できることも、導入を後押ししました」。

まずは 2 か月かけて、学習も兼ねたプロトタイプ開発を実施。2023 年 10 月には、実際に業務で利用する AI アプリの開発に着手しています。

池田 淳 氏, カスタマー本部 カスタマーリレーション部 副部長, サイボウズ株式会社

“マイクロソフトは生成 AI への取り組みが早く、この当時に生成 AI を使えるメガ クラウドは Azure しかありませんでした。またマイクロソフトは『責任ある AI の原則とアプローチ』というアナウンスも行っており、生成 AI 利用に伴うリスクを最小化しやすいことも評価しました。さらに、すでに社内で使っていた Microsoft Entra ID を利用できることも、導入を後押ししました。”

池田 淳 氏, カスタマー本部 カスタマーリレーション部 副部長, サイボウズ株式会社

2 つの AI アプリを矢継ぎ早にリリース、これで得られた「利用拡大と定着」に関する知見

最初に作成されたのは、サポート センターへの過去の問い合わせ履歴の内容を、チャットで質問して回答するというものです。サイボウズでは顧客からの問い合わせを、同社の主力サービスである「kintone (キントーン)」などに蓄積していますが、そのデータベースへの AI 検索を Azure AI Search と Azure OpenAI で行い、kintone 経由でユーザーに回答しているのです。なお Azure AI Search と Azure OpenAI の連携は、Azure Functions 上に実装された Python アプリで行っています。

これは「ChatREL」と呼ばれており、2023 年 12 月にリリース。わずか 2 か月で開発を完了しています。これだけスピーディに開発できたのは、サイボウズという会社自体に内製文化がある上、開発者自身が業務内容を熟知しているからだといえるでしょう。そのため業務リサーチを行わなくても、どのような機能を提供すればいいのかがわかっていたのです。

これに加えて、サイボウズ カスタマー本部 カスタマーリレーション部 チームリーダーの鶴本 時彦 氏は、次のように述べています。

「Azure は設計自体が理にかなっており、とても理解しやすいと感じました。また欲しいと思う機能が標準で用意されていることも、開発スピードに貢献しています。例えばベクトル検索を行いたい場合、Azure AI Search の API を使えば、入力値のベクトル化を自動的に行なってくれるのです。最初はナレッジ検索を自前で作るつもりでしたが、実現のための手法はすべて Azure AI Search で実現できることがわかりました」。

しかし最初の AI アプリは、なかなか利用が広がっていきませんでした。利用者にヒアリングを行い、Azure AI Search のセマンティック ランキングを活用した回答精度の向上や、アップデート時の告知も行いましたが、それでも利用者は増えていかなかったのです。

このような状況の中、2023 年 12 月には次の AI アプリの開発がスタート。これは「SearchREL」と呼ばれています。

サイボウズのサポート センターでは、サポート メンバーが顧客の要望を kintone のデータベースに登録していますが、その際に用語の一貫性をもたせるため、過去の登録内容を検索してどのような用語が使われていたのかを確認する業務があります。そのための「用語検索」のアプリはすでに kintone 上で提供されていましたが、1 回の検索では見つかりにくく、検索が 3 ~ 5 回繰り返されていました。

SearchREL では、この用語検索アプリのバックエンドに、Azure AI Search 経由でデータベース検索を行う機能を追加。ユーザーはこれまでと同じように kintone 上のアプリを利用するだけで、高精度な回答を得ることができます。

開発着手翌月の 2024 年 1 月にリリースされたこの AI アプリは、一気に利用が拡大していきます。検索効率もこの AI アプリによって一気に向上。該当する用語が 1 回の検索で見つかるようになり、ユーザーの手間は 1/3 ~ 1/5 に削減されました。

新たな AI アプリを提供するのではなく、既存業務の一部を生成 AI に置き換えることが、利用拡大と定着につながる。サイボウズ カスタマー本部の開発チームは ChatREL と SearchREL によって、このような知見を得ることができたのです。

鶴本 時彦 氏, カスタマー本部 カスタマーリレーション部 チームリーダー, サイボウズ株式会社

“Azure は設計自体が理にかなっており、とても理解しやすいと感じました。また欲しいと思う機能が標準で用意されていることも、開発スピードに貢献しています。例えばベクトル検索を行いたい場合、Azure AI Search の API を使えば、入力値のベクトル化を自動的に行なってくれるのです。最初はナレッジ検索を自前で作るつもりでしたが、実現のための手法はすべて Azure AI Search で実現できることがわかりました。”

鶴本 時彦 氏, カスタマー本部 カスタマーリレーション部 チームリーダー, サイボウズ株式会社

利用データの拡張でノイズが発生、これを排除するためデータの整理・構造化も実施

これまでの知見にもとづき、2024 年 6 月には 3 番目の AI アプリの開発に着手。これは「Cysup Copilot」と呼ばれるブラウザ拡張機能であり、ブラウザにインストールすることで、業務で使う Web アプリの右側に AI チャットが表示されるというものです。基本的な機能は ChatREL と同様ですが、業務アプリと一体化させることで、ユーザーの動線を大幅に短縮したのです。

開発着手翌月の 2024 年 7 月にリリースされ、これも利用者が一気に増大。今ではカスタマー本部だけではなく、社内の他の部署でも活用されるようになっています。

生成 AI の活用が広がったことを受け、2024 年 10 月には生成 AI で利用するデータ量の拡張にも着手。これまでは「直近 1000 件」しか利用していませんでしたが、これを一気に 30 万件にまで増やすことになったのです。なお現在では、カスタマー本部が保有する 50 万件のデータが活用されています。

ここで問題になったのが、データ量の増大で回答精度は高くなったものの、無関係な内容が回答に含まれるといった「ノイズ」が増えたことです。この問題を解決するため、データの整理・構造化を実施。ここで活用されたのが、Fabric です。

「そもそも『中間データを作成する』という発想がなかったのですが、社内の技術部門から Fabric の『メダリオン アーキテクチャ』や分散処理の話を聞き、それなら使ってみようと考えました」と鶴本 氏。これによって、当初は数か月かかると想定していたデータの構造化が、わずか 1 日で実施できるようになったといいます。

2024 年 12 月には、新人向けの「顧客対応ロールプレイ」アプリの開発に着手。これはユーザーがキーワードを入力すると、それに関連する問い合わせのカテゴリーが列挙され、その中から 1 つを選ぶと生成 AI が過去の問い合わせの中から質問を 1 つ選んで提示、これに対してユーザーが回答を入力し、その内容が正しければ、次の質問が提示される、というものです。2025 年 3 月にリリースされています。

この AI アプリを開発した、サイボウズ カスタマー本部 カスタマーリレーション部の徳永 貴一 氏は、次のように語っています。

「AI アプリを開発・実装するには生成 AI とインフラの知識が必要ですが、わからないことがあってもマイクロソフトが提供しているドキュメントやチュートリアルで、すぐに知識を得ることができます。またネット上の記事も多く、これらを参考にしながら試していくうちに、知識がバランスよく身につきました。アプリ開発では GitHub Copilot も活用していますが、とても使いやすいと感じています」。

徳永 貴一 氏, カスタマー本部 カスタマーリレーション部, サイボウズ株式会社

“AI アプリを開発・実装するには生成 AI とインフラの知識が必要ですが、わからないことがあってもマイクロソフトが提供しているドキュメントやチュートリアルで、すぐに知識を得ることができます。またネット上の記事も多く、これらを参考にしながら試していくうちに、知識がバランスよく身につきました。アプリ開発では GitHub Copilot も活用していますが、とても使いやすいと感じています。”

徳永 貴一 氏, カスタマー本部 カスタマーリレーション部, サイボウズ株式会社

エージェント的な AI アプリで「後処理時間ゼロ」の実現へ

2025 年 4 月には、「電話の会話内容の自動要約」を行う AI アプリの開発もスタート。これは、電話システム側でテキスト化されて kintone に登録された会話データを Azure OpenAI で要約し、その結果を kintone に登録するという動作を、自動的に行うエージェント的な AI アプリです。その実現のために、Microsoft Foundry や Azure Service Bus、Azure Functions なども活用されています。

この開発・実装を担当した、サイボウズ カスタマー本部 カスタマーリレーション部の行本 遥 氏は、次のように語っています。

「私は 2025 年 1 月にこのチームに参加し、Azure のこともここで初めて知りました。そのため当初は、文字起こししたテキストを生成 AI に投げたらどうなるのか、イメージすらできませんでした。しかし Microsoft Foundry のプレイグラウンドを使えば、開発・テストして結果を確認するという作業を、ノーコードで簡単に行えます。実際に自分で作ったものが動くと、とても愛着が湧くのだということもわかりました」。

この AI アプリは 2025 年 10 月にリリースされ、試験的な運用がスタート。サポート メンバーが会話内容の要約を行う必要がなくなり、kintone への登録時に必要な項目の選択を行うだけで、業務が完了するようになっています。

行本 遥 氏, カスタマー本部 カスタマーリレーション部, サイボウズ株式会社

“私は 2025 年 1 月にこのチームに参加し、Azure のこともここで初めて知りました。そのため当初は、文字起こししたテキストを生成 AI に投げたらどうなるのか、イメージすらできませんでした。しかし Microsoft Foundry のプレイグラウンドを使えば、開発・テストして結果を確認するという作業を、ノーコードで簡単に行えます。実際に自分で作ったものが動くと、とても愛着が湧くのだということもわかりました。”

行本 遥 氏, カスタマー本部 カスタマーリレーション部, サイボウズ株式会社

電話の会話内容の自動要約を行う AI アプリによって、月間 450 時間の工数を削減しました。今後は項目選択も自動化することで ACW (After Call Work:平均後処理時間) をゼロにし、月間 600 時間の工数削減につなげていくことが目指されています。

「今はカスタマー本部の 50 万件のデータを使っていますが、社内には他にもさまざまなデータが存在します」と池田 氏。今後はこれらも積極的に活用し、顧客が抱える課題や要望などの情報を、開発部門やマーケティング部門にも届けられる仕組みを創り上げていきたいと語ります。

「すでに 2026 年 1 月にはそのプロジェクトもスタートしており、Foundry や Fabric も積極的に活用していく計画です。将来的には Microsoft 365 をはじめとする外部サービスと連携した AI 活用を視野に入れながら、kintone 自体の価値もさらに高めていきたいと考えています」。

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