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2026/05/12

総合切削工具メーカーのオーエスジー、Microsoft Fabric を軸に AI 活用を見据えたデータ基盤刷新を推進

世界最大級の総合切削工具メーカーとして、世界中の顧客に高品質・高性能な製品と充実した顧客サポートを提供しているオーエスジー。ERP およびその関連として構築した DWH と Power BI Premium によりデータ分析基盤を運用していましたが、ERP / DWH ともに老朽化が進み性能面で限界を迎えていました。また ERP 以外のシステムから Power BI Premium へのデータ連携には複数ツールが使われており、それらの運用管理負担の増大やトラブル発生も大きな問題になっていました。

この問題を解決するために導入されたのが Microsoft Fabric です。現在では Fabric が Power BI Premium を包含しており親和性が高いことや、散在していたデータを一元管理できること、AI によるデータ活用も容易になることなどが評価されました。実際に Power BI Premium のワークスペースは、わずか 1 日で Fabric へと移行しました。旧 DWH からの移行も段階的に進められています。

従来は日次で行われていたデータ連携を Fabric を活用し、日次よりも短い間隔でのデータ連携を実現するための検証を進めています。また、Fabric の OneLake にデータを集約することでデータ運用の可視化や負担軽減も可能になるなど、さまざまなメリットが期待されています。目指しているのは、あらゆるデータを Fabric に集約することで、誰でも AI を活用しながら自在にデータ活用できる環境の実現。2029 年 12 月にはデータ基盤の完全移行が達成される予定です。

OSG Corporation

10 年以上使い続けて老朽化し性能限界を迎えた ERP と DWH

「shaping your dreams」というコンセプトのもと、タップやドリル、エンドミルなどの切削工具を製造販売しているオーエスジー株式会社 (以下、オーエスジー)。愛知県豊川市に本社を置き、世界 33 か国に製造・販売・技術サポート拠点を展開、世界最大級の総合切削工具メーカーとして、世界中の顧客に高品質・高性能な製品と充実した顧客サポートを提供しています。

新素材や最新コーティング技術の研究、環境対応型商品など、未来技術のニーズやシーズをとらえた最先端技術の開発も積極的に推進。時代の大きな変化を的確に捉え続けていることも大きな特長だと言えます。そのオーエスジーが現在社内で取り組んでいるのが、データ基盤の刷新です。

「当社では 2010 年頃に ERP を導入し、その関連製品の DWH (データ ウェアハウス) を長年使い続けてきました」と語るのは、オーエスジー リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チームで係長を務める杉浦 嘉彦 氏。しかし ERP と DWH がいずれも老朽化しており、性能の限界によってデータ増大への対応も難しい状況になっていたと言います。

従来のデータ分析までの処理は、ERP のデータベースから夜間バッチで DWH へとデータを抽出し、その DWH からさらに Microsoft Power BI Premium のワークスペースへと持っていく、という流れになっていました。しかしオーエスジーには多品種少量生産の製品が多く、最近では品目マスタの大品目だけでも約 3,000 万件に上っています。さらにこの 10 年で ERP 以外のシステムも増え、海外のグループ会社のデータも取り込むようになりました。このような大量のデータを渡す処理がうまくいかず、前日のデータが見られないといった問題も、月に数回程度発生するようになっていたのです。

杉浦 嘉彦 氏, リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チーム 係長, オーエスジー株式会社

“基幹システムから DWH へのデータ連携は日次でしか行えませんでしたが、現在は Fabric の活用により、より高頻度なデータ連携を実現できないかを検証しています。また、市民開発者がレポートを作成するための基幹システムのデータは、これまで IT 部門が整形して提供していましたが、データを Fabric の OneLake にまとめてしまえばこの作業も不要になるでしょう。いつでも Microsoft 365 Copilot などに問いかけるだけで、データ分析ができるようになると期待しています。”

杉浦 嘉彦 氏, リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チーム 係長, オーエスジー株式会社

Power BI Premium から Fabric へ、ワークスペースの移行はわずか 1 日で実施

この問題を解決するため、オーエスジーは次世代データ基盤の検討に着手。データ分析・可視化ツールとして 2019 年から Power BI Premium を使っていたこともあり、2024 年 8 月にその相談をマイクロソフトに持ちかけます。ここで提案されたのが Fabric でした。

その後、マイクロソフトと共に、動作検証やハンズオンなどを実施。2024 年末には Fabric の導入を決定。その理由について、オーエスジー リソースマネジメントセンター IT戦略部 カスタマーバリューグループ システムサポートチームの久田 晃也 氏は次のように説明します。

「すでにさまざまなものを Power BI Premium で作ってきましたが、これらをそのまま Fabric へと移行すれば、開発をもう 1 回ゼロからやり直す必要がありません。これが最も大きなメリットだと考えました。また現在は複数システムにデータが散在しているのですが、これらを一元管理できる点も評価しました。さらに、今後データを集約して AI 活用などができる点も、魅力に感じています」。

旧 DWH からの移行に向けた取り組みは 2025 年 4 月にスタート。このタイミングで Power BI Premium から Fabric への移行も実施されています。

久田 晃也 氏, リソースマネジメントセンター IT戦略部 カスタマーバリューグループ システムサポートチーム, オーエスジー株式会社

“すでにさまざまなものを Power BI Premium で作ってきましたが、これらをそのまま Fabric へと移行すれば、開発をもう 1 回ゼロからやり直す必要がありません。これが最も大きなメリットだと考えました。また現在は複数システムにデータが散在しているのですが、これらを一元管理できる点も評価しました。さらに、今後データを集約して AI 活用などができる点も、魅力に感じています。”

久田 晃也 氏, リソースマネジメントセンター IT戦略部 カスタマーバリューグループ システムサポートチーム, オーエスジー株式会社

旧 DWH からの移行は段階的に実施、すでに期待されているさまざまなメリット

オーエスジーには約 100 名に上る市民開発者が活動しており、Power BI Premium で 1,000 近くのレポートが作成されています。その移行はわずか 1 日で完了していますが、その理由についてオーエスジー リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チームの土森 優 氏は、次のように説明します。

「Power BI Premium から Fabric への移行は、マイクロソフトからのアドバイスをいただきながら、基本的に全て社内で実施しています。移行作業は休日に行いましたが、問題が発生した際の戻し方についてのアドバイスや、翌日の平日に何か起きた場合に備えたサポート体制も提供してくださいました。実際には当初考えていた以上にスムーズに、ワークスペース全体を一気に移行できました」。

Power BI Premium から Fabric への移行は一気に行われましたが、旧 DWH からの移行は現在も段階的に進められています。データ収集元となるシステムの数が多く、データ基盤の移行と並行して ERP のリプレースも行われることになっているからです。また Fabric でどのようにデータを処理すべきかについて、市民開発者にヒアリングを行う必要があったことも、段階的な移行を選択した理由に挙げられています。

土森 優 氏, リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チーム, オーエスジー株式会社

“Power BI Premium から Fabric への移行は、マイクロソフトからのアドバイスをいただきながら、基本的に全て社内で実施しています。移行作業は休日に行いましたが、問題が発生した際の戻し方についてのアドバイスや、翌日の平日に何か起きた場合に備えたサポート体制も提供してくださいました。実際には当初考えていた以上にスムーズに、ワークスペース全体を一気に移行できました。”

土森 優 氏, リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チーム, オーエスジー株式会社

このように、まだ完全に移行したわけではありませんが、すでにいくつかのメリットが見え始めています。杉浦 氏は次のように語っています。

「基幹システムから DWH へのデータ連携は日次でしか行えませんでしたが、現在は Fabric の活用により、より高頻度なデータ連携を実現できないかを検証しています。また、市民開発者がレポートを作成するための基幹システムのデータは、これまで IT 部門が整形して提供していましたが、データを Fabric の OneLake にまとめてしまえばこの作業も不要になるでしょう。いつでも Microsoft 365 Copilot などに問いかけるだけで、データ分析ができるようになると期待しています」。

その一方で、運用管理面でのメリットもあると指摘されています。

「これまでは仮想サーバーのデータ ゲートウェイや ETL など、複数のツールをばらばらに利用してデータを集めていましたが、それらのさまざまなところでトラブルが発生していました。このような機能を Fabric でワンパッケージ化しパイプラインを組むことで、『どこで何が動いているのか』、エラーが発生した場合には『どういう理由でエラーが起きたのか』がわかりやすくなり、データの運用保守も容易になるはずです」とオーエスジー リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チームの原田 峰行 氏は語ります。

原田 峰行 氏, リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チーム, オーエスジー株式会社

“これまでは仮想サーバーのデータ ゲートウェイや ETL など、複数のツールをばらばらに利用してデータを集めていましたが、それらのさまざまなところでトラブルが発生していました。このような機能を Fabric でワンパッケージ化しパイプラインを組むことで、『どこで何が動いているのか』、エラーが発生した場合には『どういう理由でエラーが起きたのか』がわかりやすくなり、データの運用保守も容易になるはずです。”

原田 峰行 氏, リソースマネジメントセンター IT戦略部 デジタルオペレーショングループ 基幹業務変革チーム, オーエスジー株式会社

あらゆるデータを Fabric へと集約し、誰でも自在に活用できる環境の実現へ

では旧 DWH からの移行はどのような状況なのでしょうか。現在進められているのが、基幹システム (ERP) に含まれる販売管理領域データの移行です。これは 2026 年 4 月に完了し、データの蓄積・加工・分析が Fabric で完結するようになります。その後も段階的に Fabric に取り込むデータ領域を拡大し、2029 年 12 月の ERP の入れ替えに合わせて、データ基盤の移行が完了する計画です。

最終的な姿は図に示す通りです。国内だけではなく海外拠点も含む多岐にわたるシステムから、あらゆるデータを Fabric へと集約。メダリオン アーキテクチャによってデータの構造と品質を向上させ、Power BI や AI で自在に可視化・分析できるようにすることが目指されています。

「このように ERP の切り替えと並行してデータ基盤の移行を進めるのは、気が重くなる業務だと思われるかもしれません」と杉浦 氏。しかしこの決断をしたことで、実際には ERP の切り替え負荷は、大幅に低減する予定なのだと語ります。ERP の過去データを新たなデータ基盤に載せておくことで、切り替え先の ERP に移し替える必要がなくなるからです。「ユーザー側からも『ERP が変わっても過去の数値は同じように見たい』という意見があり、今回の方法でその要望にも対応できるようになりました」。

経済産業省は 2018 年の「DXレポート」において、既存の基幹システムやソフトウェアなどが時代遅れの「レガシー システム」になってしまう問題を「2025 年の崖」と表現していましたが、その 2025 年が過ぎた現在でも老朽化した基幹システムの更新が完了していない企業は、決して少なくありません。その理由の 1 つは、更新に伴う膨大なデータ移行の労力が重く、収拾がつかない状況に陥りやすいことです。しかしオーエスジーのように Fabric を先行導入してデータ基盤を段階的に移行するアプローチであれば、移行の負担を軽減しながら、データの利活用や AI 活用といった新たな価値創出にもつなげることができます。これは今後、有力な手法として注目されることになるのではないでしょうか。

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