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2026/04/16

地域の急性期医療を担う松本協立病院が Azure Arc を採用し、ハイブリッド クラウド環境へと移行。新しい技術にチャレンジすることで変化に対応できる基盤を確立

「いつでも どこでも だれもが 安心してかかれる医療をめざします」を医療福祉宣言として掲げている松本協立病院。IT への先進的な取り組みを行っている病院としても知られています。最近では、院内の膨大なデータを活用しながら先端テクノロジーの恩恵を受けるために、ハイブリッド クラウドを医療 IT の「最適解」だと判断。しかし地方の病院は IT 人材を確保することが難しく、オンプレミス環境の運用負荷を下げながら、セキュリティ ポリシーの統一的な適用をどう実現していくのかが、大きな課題になっていました。

この課題を解決する上で重要な役割を果たしているのが、Azure ポータルからオンプレミス システムも管理できる Azure Arc です。松本協立病院のシステム課は発表時から Azure Arc に注目。2025 年 3 月に稼働を開始したデル・テクノロジーズの Azure Local 導入をきっかけに、Azure Arc による院内システムのクラウド連携を開始しました。さらにその上で Azure Virtual Desktop の仮想マシンを院内に展開する、といった取り組みも進められています。

ハイブリッド クラウドへのシフトは、大きなメリットがもたらされると期待されています。第 1 は、これまでリモート アクセスで使われてきた VPN からの脱却によるセキュリティの向上。第 2 は、パブリック クラウドの機能を使った院内 IT の運用管理とリモート メンテナンスによる人材不足への対応。そして第 3 が、ハイブリッド AI が活用可能になることです。機微な医療データは院内に置きながら、Azure OpenAI in Foundry Models が提供する AI モデルを利用するという取り組みが、すでに始まっています。

Matsumoto Kyoritsu Hospital

先進的な IT 環境が当たり前のように整備されてきた松本協立病院

JR 松本駅のアルプス口からすぐの場所に立地し、地域の急性期医療を担っている社会医療法人 中信勤労者医療協会 松本協立病院 (以下、松本協立病院)。「いつでも どこでも だれもが 安心してかかれる医療をめざします」を医療福祉宣言として掲げ、地域に根ざした安心・安全な医療福祉を提供しています。その前身は働く人々が 1974 年に創り上げた「松本診療所」であり、1981 年に松本協立病院となりました。その開設時から地域の方々や近隣の医療機関などの指導を仰ぎながら、現在では 199 床の急性期医療を担う病院へと成長しています。

このように住民・患者はもちろんのこと、地域の医療機関からも信頼される病院ですが、もう 1 つ注目すべき点があります。それは早い段階から IT 活用を積極的に進めてきたことです。

1999 年には介護保険システムを導入し、インターネットにも接続。オーダリング システムや電子カルテ システムは 2000 年に導入し、2010 年には電子カルテ サーバーを仮想化しています。

インターネット接続に否定的な医療業界にあって、2013 年には Microsoft 365 (当時は Office 365) をいち早く契約するなど、利用者目線でのクラウド活用にも積極的です。

「私がここに入職したのは電子カルテが導入された 2000 年ですが、院内の情報基盤はすでにインターネットとイントラネットが共存している状態でした」と語るのは、松本協立病院で副院長を務める上島 邦彦 氏。VPN による院外からのリモート アクセスも、2002 年には可能になっていたと振り返ります。

「私が知る限り、このような病院はほかにありません。他の病院からは『信じられない』と言われるような先進的な IT 環境が、この病院ではすでに当たり前のように存在していたのです。これは IT を担当している白川さんが、常に先を見据えて取り組んでくださったおかげだと考えています」。

「病院は数多くの検査機器を備え、膨大なデータを有しているにもかかわらず、その扱いは 30 年前と大きく変わらず、情報活用が著しく遅れています」と語るのは、上島副院長が名前を挙げた松本協立病院 システム課 課長の白川 栄治 氏。情報の本質のひとつは「伝達と分析」であり、その速度を速くすることで、大きな利益がもたらされると言います。白川 氏が先進的な取り組み続けてきたのも、この利益を最大化するためなのだと説明します。

上島 邦彦 氏, 副院長 (総合診療科診療部長、感染対策室長、臨床研修プログラム責任者を兼任), 松本協立病院

“今の新しい IT 環境があれば、マニュアルや手順書、院内の決まりごと、ガイドライン、教科書的な情報まで、すべて手元の端末でどこででも見られるようになるでしょう。またカンファレンスや申し送りも、場所に縛られずに行えるようになるはずです。自宅にいる医師が電子カルテを見て指示を出したり、救急搬送中や夜間の患者さんの状況をオンラインで確認したりすることも可能になります。将来的には病院の枠を超え、地域全体で情報共有できる仕組みになっていくと確信しています。”

上島 邦彦 氏, 副院長 (総合診療科診療部長、感染対策室長、臨床研修プログラム責任者を兼任), 松本協立病院

ハイブリッド クラウドこそが医療 IT の最適解、その実現に Azure Local と Azure Arc を活用

その松本協立病院が、今さらに大きな一歩を踏み出そうとしています。オンプレミスとクラウドを融合させたハイブリッド クラウドの基盤を確立し、AI 時代の情報処理をさらに高速化しようとしているのです。その背景にある考え方について、白川 氏は次のように説明します。

「医療機関はクラウドにフル移行できない事情も多いのですが、オンプレミスだけでは AI の最新モデルなど、先端テクノロジーの活用が困難です。その一方で、病院には膨大なデータが存在するため、これらを全てクラウドに載せてしまうと回線やストレージのコストが跳ね上がり、レイテンシが発生するという問題もあります。データの適材適所を実現しながら新しいテクノロジーの恩恵を受けるには、ハイブリッドクラウドこそが医療 IT の最適解だと考えています」。

これを実現するためのテクノロジーとして白川 氏が着目したのが、Azure ポータルからオンプレミスシステムも管理できる Azure Arc と Azure から管理することを前提に作られた仮想化基盤 Azure Local でした。

「Azure Arc と Azure Local には、2019 年に発表された当初から注目していました」と白川 氏。しかし当初は機能が十分ではないと感じていたため、導入の判断ができなかったと振り返ります。その後、機能拡張のリリースを継続的にウォッチし、2025 年 3 月に稼働を開始したデル・テクノロジーズの Azure Local 導入をきっかけに、Azure Arc による院内システムのクラウド連携を開始。IT 人材の確保が難しい状況でもハイブリッド クラウドを Azure Arc から効率よく運用管理し、そのポテンシャルを最大限に引き出せる環境の実現が目指されたのです。

その後、長年にわたって運用されてきた仮想デスクトップ (VDI) 環境をより柔軟かつセキュアなものにするため、Azure Virtual Desktop (AVD) for Azure Local の導入も始まっています。

デル・テクノロジーズの「Dell MC760」× 3 ノード、「Dell MC760」× 2 ノードの 2 クラスターが導入されています。なお後者は仮想デスクトップ用となっており、Azure Virtual Desktop への移行が進みつつあります。
白川 栄治 氏, システム課 課長, 松本協立病院

“医療機関はクラウドにフル移行できない事情も多いのですが、オンプレミスだけでは AI の最新モデルなど、先端テクノロジーの活用が困難です。その一方で、病院には膨大なデータが存在するため、これらを全てクラウドに載せてしまうと回線やストレージのコストが跳ね上がり、レイテンシが発生するという問題もあります。データの適材適所を実現しながら新しいテクノロジーの恩恵を受けるには、ハイブリッド クラウドこそが医療 IT の最適解だと考えています。”

白川 栄治 氏, システム課 課長, 松本協立病院

新しい製品や技術にチャレンジすることで、変化に対応できる基盤を作り続ける

 Azure Arc の運用はまだ始まったばかりであり、院内システムを新しい基盤へと移行する取り組みも現在進行中です。しかしこれらの導入は、大きなメリットがもたらされると期待されています。

第 1 のメリットは、セキュリティの向上です。今回導入した Azure Arc および AVD for Azure Local はアウトバウンドのみで Azure と通信するため、これまで VPN に依存していたリモート アクセスの代わりに Azure ポータルを利用したり、ユーザーがいったん Azure で認証を行った上で院内の仮想デスクトップに接続する方法へと移行することで、ランサムウェア攻撃の標的になりやすい VPN からの脱却が可能になるからです。境界型セキュリティからの脱却は、既に導入済みの Microsoft 365 と共通の Entra ID 認証に統合する形で行われています。

第 2 のメリットは、人材不足への対応が可能になることです。地方では高度な IT 人材の確保が困難ですが、Azure Arc であれば Azure ポータルからオンプレミス システムの運用管理も行えるため、クラウド人材によるリモート メンテナンスが容易になります。実際に松本協立病院では、長らく院内 IT 運用を支えていた派遣エンジニアの契約終了を機に遠隔地の派遣エンジニアによるリモート メンテナンス体制が確立され、Azure Arc 導入の恩恵を受けています。

第 3 のメリットは、ハイブリッド AI が活用可能になることです。機微な医療データは院内に置きながら、Azure 上に配置したノーコードの AI 開発ツールなどを介して、Azure OpenAI in Foundry Models が提供する AI モデルの利用が始まっており、今後は院内への AI モデル展開も視野に入れています。

「現場のスタッフにとっては『AI が使えるようになった』『検索が便利になった』という点が、変化として受け止められているようです」と上島副院長。すでに最先端の IT 環境が提供されていたこともあり、ユーザーから見ると既存環境からの差は、それほど大きく見えないのだと言います。院内 IT のハイブリッド クラウド化を支える Azure Arc は、IT 利用者からみれば黒子のようなもの、しかしこの環境が今後もたらすインパクトは、極めて大きいはずだと指摘します。

「今の新しい IT 環境があれば、マニュアルや手順書、院内の決まりごと、ガイドライン、教科書的な情報まで、すべて手元の端末でどこででも見られるようになるでしょう。またカンファレンスや申し送りも、場所に縛られずに行えるようになるはずです。自宅にいる医師が電子カルテを見て指示を出したり、救急搬送中や夜間の患者さんの状況をオンラインで確認したりすることも可能になります。将来的には病院の枠を超え、地域全体で情報共有できる仕組みになっていくと確信しています」。

このような期待に対し、「新しい製品や技術にチャレンジすることで、次の 5 年、10 年の可能性が開けます」と白川 氏。「現状維持ではなく、変化に対応できるIT環境を作り続けることが重要だと思っています」。

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