お客様の声
「お客様本位」の保険サービスを目指すアイリックコーポレーション、保険業 DX に貢献する文書検索システム「 AS FiNDER 」を Azure OpenAI in Foundry Models で構築
サマリー
AS FiNDER の開発の経緯と効果
顧客からの照会に応じて保険募集人が約款や規定を確認する業務は、分厚いマニュアルや分散したシステムに依存しており大きな負担となっていました。こうした課題を解決するため、 Azure OpenAI in Foundry Models ( Azure OpenAI )を基盤として AS FiNDER を開発。情報を探す作業に費やしていた約 120 時間/年の削減により、業務効率と顧客対応品質の向上を実現しています。
Azure OpenAI を選定したメリット
Azure OpenAI の採用により、高性能な GPT モデルを安全な Azure 環境で活用できた点が大きなメリットでした。 Azure AI Search や Document Intelligence などを組み合わせ、情報の要約を含む高精度な回答生成も可能となりました。加えて Azure OpenAI の拡張性によって、保険業界が求める厳格なセキュリティ要件にも柔軟に対応できました。
今後の展望
今後は予測変換など、保険募集人を能動的に支援する機能の拡充を予定しています。約款は頻繁に更新されるため、作業の自動化も視野に入れて継続的な機能改善を計画しています。 AS FiNDER を含む AS シリーズは累計ユーザー数が 1 万人に近づいており、保険業界全体の DX と働き方改革をさらに加速させていきます。
事例本文
株式会社アイリックコーポレーション(以下、アイリックコーポレーション)は、日本初の来店型保険ショップ「保険クリニック」の運営や、保険販売事業者向け支援システム「 AS シリーズ」を提供するなど、保険業を基盤に幅広い事業を展開しています。
同社が開発した「 AS FiNDER 」は、保険業界に特化した情報検索サービスです。 Azure OpenAI in Foundry Models (以下、 Azure OpenAI ) を基盤として、生成 AI ×セマンティック検索、保険会社の約款データベースの組み合わせにより、保険募集人(いわゆる「保険の営業員」)が複数の保険会社の約款や規定を横断的に検索でき、目的の情報に迅速・正確に到達できるよう設計されています。 AS FiNDER の利用によって、保険募集人 1 人につき約 120 時間 / 年の時間節約の効果が得られると試算されています。
昨今の保険代理店では、顧客管理システム( CRM )の導入などによって顧客の意向の把握は高度化したものの、「保険商品の詳細確認」や「引受目安の確認」といった業務領域では、今なお分厚い紙のマニュアルでの確認作業が必要なほか、ときには各保険会社へ電話で照会する業務フローが残っています。
保険会社側は業務リソースのひっ迫を解消するべく、保険代理店の自立化を促す取り組みを推進していますが、まだまだ道半ばの状況です。一方で保険募集人側には、顧客へ行った提案や説明の証跡を確実に残すことが求められており、情報のデジタル化・集約化による効率化が喫緊の課題となっています。
業界特有の複雑な情報検索を AI で革新する、インシュアテックの実践者
現在、日本で事業展開している生命保険会社と損害保険会社は 50 社以上あり、保険業法によって「募集人は顧客の意向を正しく把握し、意向に沿った提案をしなければならない」と定められています。しかし保険商品は複雑なサービスであり、難しい専門用語が多く使われていることから、顧客は「わかりにくい」と感じがちです。保険をいかに「わかりやすく」するか。アイリックコーポレーションは、「お客様本位」の理念のもと、 30 年以上にわたってこのテーマの解決に取り組んできました。
同社 ソリューション事業本部 ソリューション事業部 部長代理の山内諭史氏は、保険をわかりやすくするために必要なことを次のように説明します。
「各保険会社は、それぞれ独自のカラーを打ち出してサービスの差別化などを図っていますが、これが結果的に共通したフォーマットでの商品の比較を妨げる原因となっています。販売を担当する募集人にとっても、必要な情報の分散がネックとなり、お客様の意向に沿った提案を追求しようとするほど、提案のスピードや効率が損なわれるというジレンマを抱えています。最新のデジタル技術を活用してこれらの問題を解消し、お客様本位を実現するサービスを提供したいと考えています」(山内氏)
まさにアイリックコーポレーションは、インシュアテック(テクノロジーの活用による保険業の効率化・高付加価値化など)という言葉が登場する以前から保険業の革新に取り組んできた、時代を先取りしている企業なのです。
株式会社アイリックコーポレーション ソリューション事業本部 ソリューション事業部 部長代理
山内 諭史 氏
募集人を悩ませる「情報探しの手間」をAIで解決
AS FiNDER が目指している「顧客からの多岐にわたる照会作業の効率化」や「保険販売現場での生産性向上」、「顧客対応品質の向上」などは、まさに保険業 DX の最前線です。顧客の体験価値に直結し、さらに保険募集人の働き方改革にも貢献するなど、時代に即したサービスといえます。
アイリックコーポレーションの特徴は、代理店として保険業務の実務を手掛ける企業として、「現場の募集人が何に困っているか?」を熟知している点にあります。
募集人は新規契約から保全、支払い領域まで、顧客から寄せられる幅広い照会に対応しなくてはなりません。しかし回答を作成するには複数のシステムに点在する大量のマニュアルや規定を調べ、情報の精査と確認が必要です。従来の検索システムでは、検索ワードのヒットするページが膨大になりやすく、顧客の問い合わせの意図を理解したうえで目的の情報に到達するには知識と経験が必要でした。
こうした課題を整理すると、文書検索に時間を要する「①時間的ロス」、検索作業に慣れているかどうかで回答の質が変わってしまう「②品質のバラつき」、顧客を待たせながら正しい情報の速やかな特定が求められる「③精神的負担」の3つのテーマへと分解できます。
上記の課題①と②に対して、 AS FiNDER では単純なキーワード一致ではなく、 AI が質問の意図を解釈して関連度の高い文書を抽出して表示するセマンティック検索を実装しています。これにより、照会で曖昧な文言が使われても、適切な約款・規定の情報に辿り着けます。さらに AI は、検索結果から内容の要点を自動要約も生成するため、募集人は当該文書を開く前に概要の把握が可能です。こうした迅速化・高品質化によって、課題③も解消します。
保険業界独自のニーズに対応する、 AI 搭載型の情報検索システム
AS FiNDER は日本で事業展開する約 50 社以上の約款・取扱規定の最新バージョンを収録しており、廃止商品や古い商品の情報も含めて一元化しています。 AS FiNDER のユーザー企業が取り扱っている保険会社のみを表示できる仕様のため、無関係な情報が表示されることもありません。
また、保険業界のドキュメントには専門用語が多く、一見すると似たような内容が書かれているページが非常に多いという特徴があります。さらに募集人は日常的に略語を使用するため、こうした単語もすべて辞書化しなければ実用性を担保できません。
たとえば保険料は英語で「 Premium 」と書くため、被保険者が所定の病気や怪我などで保険料の支払いが免除(払込免除)される状態を「 P免」と略します。システムを略語にも対応させ、「 P免」で検索されても必要文書にたどり着けるような工夫を施しています。
こうした精度は実際の検索ログに基づいてチューニングされているほか、アイリックコーポレーションに所属する保険販売の実務経験者が約款や規約更新をタイムリーに反映することで維持向上しています。エンドユーザー視点による地道な取り組みによって、「現場で本当に使える検索精度」として磨き続けられているのが AS FiNDER が支持される理由です。
年間 120 時間の作業時間を削減し、より価値の高い仕事へ注力
検索精度の向上にも AI は活用されており、既存文書はすべて AI に学習・要約させて RAG に使用しています。これが単なる文書検索システムと AS FiNDER の大きな違いです。しかし生成 AI を活用するソリューションでは、誤回答への対策が不可欠です。アイリックコーポレーションは保険業に精通した社員が判定して精度評価を繰り返したほか、 AI が回答した情報の出所(エビデンス)の併記を徹底することで、ユーザーが正確な情報へアクセスできるよう仕組み化しています。
AS FiNDER の利用によって、募集人は情報検索・取得に使っていた時間を約120時間/年ほど短縮できるとアイリックコーポレーションは試算を公表しています。これは 1 日あたりに換算すると約 30 分/日に相当し、情報を探すだけで消費されていた時間を価値創出の時間へと転換できます。
「お客様と会うことが、募集人の注力すべき仕事です。情報検索という単純作業を効率化する AS FiNDER は、保険業界の働き方改革にも貢献します」(山内氏)
AS FiNDER は大人数の募集人が所属する大手代理店ほど大きな経営上のメリットを得られるのはもちろん、小規模な代理店であっても、人数に応じた課金制度のためコストの最適化が可能です。
拡張性と機能性に重点をおいて AS FiNDER を構成
AS FiNDER の構築は6社コンペとなり、 AZPower 株式会社(以下、 AZPower )がレスポンスの速さやコスト感、対応の柔軟性、マイクロソフトのソリューション専業ベンダーであることによる専門性の高さなどが総合的に評価されて選ばれました。
AS FiNDER のプロジェクトを担当した AZPower 営業本部 マネージャー 木内 航 氏は、 AS FiNDER は PaaS 主体の Web アプリケーションとして展開されており、その構成は下記の通りであると説明します。
フロント・バックエンド: Azure App Service
Web Application Firewall ( WAF ): Azure Front Door
リソースとの接続: Private Endpoint
モデル: Azure OpenAI in Foundry Models
RAG : Azure AI Search
OCR : Azure Document Intelligence
DB : Azure Database for MySQL
アンチウィルス: Microsoft Defender for Cloud ( for AI )
「この構成は今後の拡張性を意識しており、特殊なカスタマイズを施さない方針をご提案しました。 AZPower はマイクロソフトのソリューションを専門に扱う少数精鋭のメンバーで構成しており、インフラも Azure のみを使うと決めて範囲を絞っていることが機動力の源泉です」(木内氏)
AZPower には RAG を使用した文書検索システムの実績があり、かつ精度改善の取り組みの経験があったことも高く評価されました。
アイリックコーポレーションは RFP の段階で、課題とニーズに加えてリリース後の展望もまとめていました。素早く PoC (概念実証)を実施してスモールスタートできたことも、このプロジェクトの成功要因の 1 つです。その際、モックアップを現場の保険募集人に触ってもらって改修を繰り返すフィードバックループを回したことで、現場に使ってもらえるサービスとして洗練されました。
AZPower株式会社 営業本部 マネージャー 木内 航氏
マイクロソフトのソリューションを全方位的に活用
Azure OpenAI を採用することで、言語モデルとして OpenAI の GPT モデルを利用できることが特に魅力的だったと山内氏は強調します。大量のドキュメントを適切にモデルに渡し、エンドユーザーへの回答を生成するうえでは、 RAG における AI Search 、 OCR における Document Intelligence が Azure 上で提供されていたこともメリットでした。
セキュリティ対策においても、 WAF による入り口対策に加え、 Azure リソース保護の Microsoft Defender for Cloud など充実しており、多層防御の観点においてマイクロソフトのソリューションの魅力だったと山内氏、木内氏は声をそろえます。
保険業界は、利用する IT ソリューションに対して高度なセキュリティ要件を求めます。一般的な SaaS は基盤側のルールにユーザー側が準拠するパターンを基本としますが、保険業界はそれとは異なり、厳格なセキュリティチェックを満たすことが必須でした。 AS FiNDER は、 Azure OpenAI の柔軟性を活用し、保険業界が求めるセキュリティ要件に対応しました。
「 Azure の良さは、こうした追加要件に柔軟に対応できることです。開発プロジェクトの初期段階では Microsoft Defender for Cloud は要件に入っていませんでしたが、本サービス開発のパートナーである保険代理店からセキュリティチェックシートが提供され、要件に追加されました」(木内氏)
シリーズ全体の 1 万ユーザーと共に、保険業界の DX を推進
リリース直後は回答精度に対して厳しい評価をいただくこともあったと山内氏は振り返ります。しかし昨今の人的リソース不足や保険サービスの品質向上のために DX は不可欠だとアイリックコーポレーションは確信しており、多くのユーザーから「とても助かっている」「より検索しやすくなることを期待している」といったポジティブな声も寄せられています。
アイリックコーポレーションは AS シリーズ全体でユーザー数を着実に増やしており、合計 1 万ユーザーの達成が目前であると山内氏は語ります。
「今後は予測変換機能など、現場の保険募集人の業務を能動的にアシストする機能を実装していく予定です。保険業界のドキュメント更新は頻度が高く、新商品も登場します。 AS FiNDER には、不断のメンテナンスが求められますので、当社はその覚悟を持ってこのサービスの維持と発展に尽力しています。現在は人手を掛けて行っている更新作業もいずれは自動化したいと考えています」(山内氏)
これまで、保険業界の見えざるコストだった「文書検索・情報探しに要した時間」が AS FiNDER によってゼロになることで、保険業界の DX さらなる加速が期待されます。
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